ガンバを三冠に導いた長谷川健太監督の「三大革命」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 長谷川監督はまた、J2で戦う昨季、守備力の強化と同時に、これまで出番の少なかった中堅や若手選手を積極的に登用。今後の世代交代を見据えつつ、チームの底上げを図ってきた。その中で、MF阿部浩之をはじめ、FW佐藤晃大、MF倉田秋、MF大森晃太郎、DF西野貴治などが力をつけ、それが今季、Jリーグ、ナビスコカップ、天皇杯と、ハードスケジュールを乗り切る要因となった。

 ナビスコカップ決勝(11月8日/3-2サンフレッチェ広島)では、途中出場の大森が決勝ゴール。Jリーグの天王山となった第32節の浦和レッズ戦(11月22日/2-0)では、パトリック、宇佐美に代わって出場した佐藤と倉田が、それぞれゴールを決めて快勝した。

 スタメンだけでなく、サブも含めたメンバー全員で勝つサッカー。それこそ、まさに「総合力」と言えるもので、ガンバの強さを象徴するものだった。

 長谷川監督が、自らの考えをブレずに貫き通したことも大きかった。

 W杯中断前、チームはJ2降格圏内の16位だった。クラブとしては、そうした状況を黙って見ているわけにもいかず、大幅なテコ入れを長谷川監督に進言した。しかし長谷川監督は、クラブからの提案に首を振って、自ら推し進めてきたやり方を貫き通した。

「(試合で)勝てない状況が続いても、ネガティブなことは一切考えなかった。ダメだったら、いつでも責任をとる覚悟はできていた。エスパルス時代にも、苦しい時期があったんでね。そういうとき、チームをどうやっていけば活性化できるのか、自分の中で方法論があったし、今までやってきたことを継続していけば、必ず結果が出ると思っていた」

 そんな長谷川監督のブレない姿勢と言葉は、ピッチ上の“指揮官”であるMF遠藤保仁に伝えられ、遠藤自身、きちんと把握していた。ゆえに彼は、苦しい状況にあっても、「これからよくなる」と語って、何ら悲観することはなかった。

 ガンバは、遠藤が動じなければ、他の選手たちも落ち着いてプレイできる。下位に低迷していても、チームが焦ったり、混乱しなかったりしたのは、そのためだ。長谷川監督のブレない姿勢は、遠藤を通して、チームを一枚岩にしていった。それがまた、チームの「総合力」を高め、「強さ」の源となった。

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