ガンバを三冠に導いた長谷川健太監督の「三大革命」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 2012年シーズン、ガンバがリーグトップの得点数(67)を誇りながらJ2に降格したのは、明らかに守備に問題があった。失点数はリーグワースト2位の65。長谷川監督はまず、それを半分に減らすことを考えたという。そのために、最初は守備のブロックを敷くことを徹底。そのうえで、前からボールを奪うという意識を選手たちに植え付けていった。

 決して簡単なことではなかったが、日頃のトレーニングでも守備の練習に時間を割いて、J2で戦う中でも、守備のことに関しては、細かい点まで繰り返し注意を促した。

「選手たちからはよく、『どこでボールを奪ったらいいんですか?』と聞かれたけど、大事なことは、ボールを奪う場所ではなく、個々の意識づけ。自分としては、(前で奪うと意識させることで)全体の守備意識を高めたかった。加えて、(前線の選手から)相手のパスコースを限定して、個々が連動して動くことを徹底していった。ひとりひとりがそういう意識を持って動けば、ボールは奪える。ただ、そういうふうにボールを奪うことばかり意識すると、今度はゴール前の守りがおろそかになってしまう。だから同時に、守るときはまずブロックを作ることを重視した。そうやって、徐々に守れるようになってきた」

 さらに長谷川監督は、攻守の切り替えを速くすることを「かなりうるさく言ってきた」という。おかげで、J1に上がった今季も、守備力は以前に比べて、かなり増していた。

 もともと攻撃力のあるガンバに守備力が加わったのだ。それで、勝てないはずがない。シーズン当初こそ、FW宇佐美貴史がケガをして振るわなかった攻撃も、ブラジルW杯開催による中断期間中にFWパトリックが加入。宇佐美と息の合ったプレイを見せ、本来のガンバらしい攻撃が復活すると、中断明け以降は攻守が噛み合って勝ち星を重ねていった。

「勝ち続けることで、一層攻守が安定するようになった」(長谷川監督)

 リーグ戦では最終的に、得点がリーグ2位の59。失点は目標どおり、一昨年の半分以下となる31に抑えた(リーグ2位タイ)。攻撃だけでなく、守備だけでもない。高いレベルで安定した攻守を構築できたことが、チームとしての"総合力"アップにつながって、強いガンバを作り上げた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る