ガンバ、反撃の起爆剤。宇佐美貴史の逆襲が始まった (2ページ目)

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa
  • photo by Sports Nippon/Getty Images

「自分なりに『活躍できなければ引退』という覚悟で、再びガンバのユニフォームを着て戦った中で、去年の半年間で、J2リーグとはいえコンスタントに得点を挙げられたのは自信になった。ただ、それが本物の力であることを証明するには、日本のトップリーグ、J1リーグでの明確な結果がいる。

 思い起こせば、今季の開幕前にはよく、メディアの方に『J1リーグでも自分は通用すると思いますか?』って聞かれたけど、僕は正直、そこは考えていませんでしたからね。通用するのは当たり前として、そのうえで何ができるかを自分に求めていた。でも、その思いが口だけではないことを示すにも、やっぱり結果が必要なんですよね。見ている人がケガで離脱していた前半戦のことを忘れてしまうくらいの、圧倒的な結果がね。

 というのも、それが4年後のW杯に向けた第一歩だと思いますから。よく『サッカーはひとりでは変えられない』と言われがちだけど、僕は『ひとりで変えられるのもサッカー』だと思っているし、ひとりで変えられる自信もある。むしろ、変えられなければ自分の存在価値はないとも思っていますしね。それを証明する後半戦にしたい」

 7月19日に行なわれたJ1リーグの再開を告げる第15節のヴァンフォーレ甲府戦。この一戦で宇佐美は、チームの先制点となる右足でのループシュートを決めた。

「ボールの軌道、速度、ボールが当たった足の箇所、GKの位置、決まった場所など、すべてにおいてイメージどおり」と振り返った会心のゴール。さらにこの日はFW倉田秋のゴールをアシストするなど、1ゴール1アシストの活躍でチームの勝利に貢献した。

 その勢いは4日後に行なわれた第16節(7月23日)の清水エスパルス戦でも止まらず、宇佐美は立ち上がりから前線で躍動。ゴールこそなかったものの、この日が初先発となった新外国籍選手のFWパトリック(フォルトレーザ/ブラジル)らと息の合ったプレイで再三にわたってチャンスを作り出し、チームも4-0で快勝した。

 この結果を受け、中断前の第14節を終えた時点では、J2自動降格圏の16位に低迷していたガンバは、11位に浮上した。

 ひとりで変えられる自信がある――そう語った宇佐美に牽引(けんいん)され、ガンバの、そして宇佐美自身の逆襲が始まった。

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