ガンバ、反撃の起爆剤。宇佐美貴史の逆襲が始まった

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa
  • photo by Sports Nippon/Getty Images

7月特集 Jリーグから始めよう(5)

 ブラジルW杯開催によるJリーグの中断期間中、ガンバ大阪のFW宇佐美貴史は、報道陣から繰り返し言葉を求められていた。W杯でドイツ代表の躍進が際立つ中、彼がそのドイツ国内のトップクラブ、バイエルン・ミュンヘンに籍を置いていたこともあってだろう。ドイツ代表や、各国の代表選手としてプレイする元チームメイトについてはもちろん、ドイツのサッカーや国民性、さらにはドイツと日本サッカーの違いにまで話はおよび、その都度、真摯に質問に答える彼の姿があった。

ガンバの攻撃を引っ張る宇佐美貴史。ガンバの攻撃を引っ張る宇佐美貴史。 だが、そんな毎日に宇佐美はふと、自身への違和感を抱いたそうだ。

「2011年7月にドイツに渡る際は、ブラジルW杯を明確な目標に定めていた自分がいたのに、挫折とも言える状態で日本に戻ってきて、昨年のJ2リーグではそれなりに点を取ったけど、今年はケガでスタートして......。結果、ブラジルW杯にも行けず、W杯に出場したこともないのにそのことを聞かれて、自分のドイツでの経験談を含めて『ああだ、こうだ』と語っている自分がいる、と。

 でも、W杯関連のある取材の帰りに、車を運転しながらふと思ったんです。『何か違うんじゃないか?』って。W杯に出場したこともないのに、W杯のことについて饒舌に語っている自分って、すごく嫌いだな、と。現役選手である限り、やっぱりW杯は見るものでも語るものでもなく、出場するべき大会ですからね。しかも、同世代の選手があれだけたくさん国を背負って戦っているのに、僕は何をしているんや、と。そう思ったら、自分への苛立ちが半端なかった」

 と同時に、そのことは宇佐美の胸にある決意を宿らせた。

「4年後、ロシア大会には絶対に出場する」

 もっとも、それが簡単ではないことは重々理解している。特にバイエルン時代には名だたる選手とプレイしたからだろう。"世界基準"を踏まえた自身の課題は、常々頭の片隅にある。

 また、世界のトッププレイヤーの活躍の影に、絶え間ない努力があることを知ったからこそ、W杯に出場することのみならず、「世界で活躍できる選手」になることがどれだけ難しいことであるのかも承知のうえだ。そして、国を背負う一員として「選ばれる選手」になるには、所属クラブでの目に見えた活躍と"結果"が必要だということも。

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