【JFL】日本サッカーを救った男・我那覇和樹のリスタート。
「やりきる自信が出てきた」

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kimura Yukihiko

現在、故郷の沖縄にあるJFLのクラブ、FC琉球でプレイする我那覇和樹。今季はJ2昇格を目指す現在、故郷の沖縄にあるJFLのクラブ、FC琉球でプレイする我那覇和樹。今季はJ2昇格を目指す
 拙著『争うは本意ならねど』を出した後、中身を読んでいない編集者などから「なぜ、今、我那覇を書くのか」とよく聞かれた。憚(はばか)りながら、と前置きしてシンプルに答える。サッカーに携わる人たちに知って欲しい事実がそこにあるからです、と。

 あなたが、サッカー協会に登録されているプレイヤー(プロは言うに及ばず、18歳以下の第2種、15歳以下の第3種、12歳以下の第4種、女子サッカー、40歳以上のいわゆるシニア層、もしくはフットサルに興じる個人登録もすべて含む)なら、ちょうど4年前の今頃を思い起こして欲しい。

 2008年の2月1日から、4月までの間にケガや持病の治療のために手術や静脈注射をした方は日本中に何人くらいいるだろうか。なぜ、こんなことを問うのか。それは当時、日本サッカー協会内でとんでもない医事規程変更(JFAドーピング新規定発効)が行なわれていたからである。

 結論を言うと、この3カ月の間で上記の治療を受けた方たちは医師も本人も知らないうちに全て潜在的なドーピング違反者にされていたのである。

 当時のJFA医学委員長はこの2008年2月1日から、FIFAのドーピング規定にもFIFAが受け入れているWADA(世界アンチドーピング機構)の規程にも無い世界でも稀(まれ)なローカルルールを発効したのである。

 その内容は「日本サッカー協会に登録する全ての選手に治療から48時間以内に診断書およびTUEの提出の義務」というものであった。「TUE」をご存知だろうか。ドーピング規程に引っかかる禁止薬物や禁止方法を選手がどうしても治療のために使用せざるをえない場合に、事前に申請し承認を受ける除外措置のことである。

 これは本来、FIFAの国際大会に出場し、ドーピングテストを受けるようなトップレベルの選手が対象となるものである。ところが、かような特殊な措置を医学委員長はJFA全登録者、すなわち小学生、中学生、高校生、女子、フットサル、ビーチサッカーの全選手に義務化してしまったのである。

 JFAの登録者数は推定で約100万人弱と言われているが、果たして何人がこの事実を知っていたのか。いったい何人が治療を受けたあとにTUEを提出しただろうか。否、それ以前にTUEの存在を知っていただろうか。私が手当たり次第に聞いた協会関係者も学校の校医も誰ひとりとして知らなかった。地方のサッカー協会長などは絶句するばかりであった。

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