荒木遼太郎と山田楓喜のプレーに結実 アジアを制したU-23日本代表の収穫とは (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【交代選手が活躍するチーム】

 大岩監督はそうした守備固めの戦法を採用しなかった。前半の早い時間に10人での戦いを余儀なくされた中国戦でも、最後まで4-4-1で戦い抜いている。徹底的に前からプレスをかける布陣で戦った。最後まで攻撃的にいく。このコンセプトを崩さずに戦い、そして優勝を飾った。哲学と勝利をクルマの両輪の関係で追求し、アジアの頂点の座に就いた。そこにサッカー指導のあるべき姿を見る気がした。

 決勝ゴールを決めた山田は、佐藤恵允と交代で後半26分に投入された選手だった。アシストとなるクイックパスを送った荒木遼太郎も後半17分、松木玖生と交代でピッチに立っている。交代選手の活躍が、苦しい試合をものにした直接的な要因だった。後から出てくる選手が活躍するチーム。これもサッカーの理想だ。

「日本は先を見て戦うことはまだ早い」とは、東京五輪後の森保監督の言葉だが、大岩監督はこの考え方とは異なる方法論で戦った。スタメンを飾らなかった選手はGK山田大樹のみ。スタメンを毎試合、大きく入れ替えながら総力戦で臨んだ。

 森保監督が「まだ早い」と言った理由は、それでは試合ごとに戦力にバラツキが出でしまうからだと思われる。しかし、大岩監督のもとでは、毎試合異なる顔ぶれこそが結果的にベストメンバーと呼ぶに相応しかった。優勝するためにスタメンを毎試合、入れ替えたのである。

 チーム一丸となりやすい采配。短期集中トーナメントにおける理想的な采配が、決勝戦の土壇場で奏功した恰好だ。荒木、山田はその瞬間を、抜け目なく虎視眈々と狙っていた。そんなプレーぶりだった。サッカーの本質にマッチした戦い方、理想的かつ模範的な采配だった。

 高い位置からプレスをかける攻撃的サッカーと言えば、相手サイドバック(SB)の攻撃参加に蓋をする役割を兼ねるウイングが、欠かせない存在になる。平河悠、藤尾翔太、山田、佐藤のウイング4人とSBが仕掛ける外攻めこそが、このチームの特徴となっていた。

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