U-23日本代表、中国に辛勝 最大の勝因は4-4-1の堅持とウイングの存在感 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【当たった藤尾翔太、佐藤恵允の投入】

 大岩監督が採用した4-4-1は、10人で戦う場合の攻撃的な布陣のひとつだ。両ウイングがより高い位置に張る、4-2-3色を残した4-4-1。このスタイルを頑張って貫いたことが勝因だと見る。

 後半21分、大岩監督は山田楓喜、平河悠に代え、藤尾翔太、佐藤恵允を投入した。先発した左右の両ウイングが守備に追われ、脚が鈍ったと判断すると、ベンチに控えていたウイングにその役割を引き継がせた。後ろで守ろうとはしなかった。

 中国の反撃ムードはその交代を境に萎んでいった。日本の生きのいい両ウイングに左右のライン際を突かれたことで、守備に追われる時間が長くなったからである。

 それはサイドの攻防の優劣がピッチ全体に及ぼす効果の大きさ、すなわちサイドアタックの有効性を再認識させられる光景でもあった。藤尾、佐藤の投入はまさに当たりだった。試合を決定づける交代といえた。

 つまり、「攻撃は最大の防御」となる。守るばかりではなく、きちんと攻撃をし続けたことが、1-0を維持する原動力になった。「いい守りからいい攻めへ」とは森保監督の常套句だが、この試合では両ウイングがしっかりと攻め込んだことが、その後のいい守りにつながったのだった。

 決勝ゴールが生まれた前半8分のシーンもサイド攻撃だった。右SB関根大輝が深い位置に侵入。その戻しを右ウイング山田が中央にクロスボールを差し込み、松木玖生の得点を導いたプレーである。

 ウイング4人の存在感が試合に大きな影響を与えた試合。中国戦をひと言でいえばそうなる。

 ウイング不毛の時代を過ごしていた10数年ほど前の日本サッカー界からは考えられない話である。当時は"中盤王国"と呼ばれたものだが、現在は一転、"ウイング王国"の時代を迎えている。ウイングこそが日本のストロングポイントになりつつある。三笘薫、久保建英がその代表になるが、その流れは大岩采配にも確実に貫かれている。

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