なぜ森保監督を続投した? 田嶋幸三の答えは「確実に勝ってくれる監督がいたら、すぐにでも代える」 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【東京五輪が有観客だったらメダルを獲っていた】

 ベスト16の壁を破って世界の頂点を狙うのなら、いつかは自国の監督に任せることになる。その「いつか」は、できるだけ早いほうがいい。

「あのタイミングでは『世代交代』がチーム作りのキーワードとなっていたので、兼任することで若い選手の吸い上げがスムーズになる。それはかつて、トルシエ監督が証明してくれました。

 1999年のワールドユースで準優勝を成し遂げた小野伸二らの黄金世代を、2000年のシドニー五輪代表へ吸い上げ、継続的に鍛えて2002年の日韓ワールドカップにもつなげていった。東京五輪でメダルを狙うためにも、何とかがんばって兼任してもらおう、と考えたのです」

田嶋幸三JFA前会長に森保監督を選んだ理由を聞いた photo by Sano Miki田嶋幸三JFA前会長に森保監督を選んだ理由を聞いた photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 2020年から2021年に延期された東京五輪では、男子のU-24日本代表がベスト4に、女子のなでしこジャパンがベスト8に終わった。

「これはもう負け惜しみになるけれど、東京五輪が有観客だったら、メダルを獲っていたと思います。男子も女子も、結果は変わっていたと思う。それぐらい悔しかった」

 2021年9月にカタールワールドカップ・アジア最終予選が開幕すると、森保は猛烈な向かい風にさらされていく。オマーンとの初戦で苦杯をなめ、サウジアラビアとの第3戦でも0-1で敗れてしまうのだ。

 これについては、スケジュールに触れるべきだろう。東京五輪が当初の予定から1年延期されたため、五輪終了からおよそ2週間でワールドカップ・アジア最終予選に挑まなければならなかった。東京五輪にはオーバーエイジの3選手を含めて日本代表の主力が出場しており、心身ともにリフレッシュできていなかった、と言うことができる。

「森保監督にはいつも『あなたより確実に勝ってくれる監督がいたら、すぐにでも代える』と言っていました。代表監督の評価は技術委員会によるものですが、僕なりの判断基準のひとつは、選手との信頼関係が揺らいでいないかどうか。

 そこについては、まったく問題なかった。日本人監督のほうが扱いやすいから、などということは一切、考えていません。日本サッカーのための一番いい選択として、森保監督に続けてもらいました」

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