サッカー日本代表 北朝鮮戦のデータは不調を脱していない証 突きつけられた根本的な問題 (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【前半はビルドアップの前進ルートを確保】

 前半と後半で、あらためてピッチ上で何が起こっていたのかを掘り下げてみる。

 まず、この試合の北朝鮮の布陣は4-4-2。対する日本は、シチュエーションによって中盤3人が逆三角形(4-3-3)に変化する可変式の4-2-3-1だった。中盤を構成したのは、ダブルボランチの守田英正と田中、1トップ下の南野拓実の3人だ。

 前半の日本は、開始直後に先制した事実を除いても、基本的には相手陣内でプレーする時間が続いた。北朝鮮は前からプレスを仕掛けることもなく、シンプルに4-4-2のブロックを形成してミドルゾーンで構えたため、日本は窮屈さを感じることなくビルドアップから敵陣に前進できていた。

 とりわけビルドアップ時に余裕があったのは、日本の両サイドバック(SB)(右の菅原由勢、左の伊藤洋輝)だった。北朝鮮の両サイドハーフ(右の20番、左の12番)が日本のSBとの距離を空け、どちらかというと、日本の両ウイング(右の堂安律、左の前田大然)をSBとともにケア。日本としては、両SBが必要以上に高い位置をとらずとも、フリーでパスを受けてからボランチや南野を使う前進ルートを難なく確保できた。

 また、日本のセンターバック(CB)(右の板倉滉、左の町田浩樹)が相手2トップ(10番、11番)からプレッシャーを受けた場合でも、田中もしくは守田がCBの間、あるいは町田の左側に落ちることで、数的優位を担保。つまり、前半の日本は複数の前進ルートを持っていたため、北朝鮮を相手陣内に封じ込めることができていた。

 ただ、北朝鮮もそれは想定内だったのだろう。日本に押し込まれる時間は続いたものの、全員がハードワークを惜しまず、アタッキングサードで日本の選手に自由を与えるシーンはほとんど見られなかった。そしてボールを奪ったら、日本の両SBの背後のスペースを狙ってロングボールを躊躇なく配球。2トップがそのボールを全速力で追いかけるという、ロングカウンターに活路を見出そうとしていた。

 日本にとって前半は大量ゴールのチャンスだったわけだが、しかし決定機は少なかった。最も大きな追加点のチャンスは43分。中盤で南野が15番からボールを奪った後にドリブルで前進し、上田綺世とのワンツーからゴール前に走り込んだ堂安に抜群のスルーパス。GKと1対1のシーンで堂安が放ったシュートがGKの足でブロックされたシーンだ。

 それ以外にも、11分の守田、13分の堂安、29分の堂安と、決まっていても不思議ではないシーンもあったが、いずれも再現性の少ない偶発的とも言えるシュートに終始。そういう点では、ボールを保持する戦況で効果的な攻撃が繰り出せないという第2次森保ジャパンの傾向は、今回の試合でも変わらなかった。

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