日本代表が「飲み込まれていた」可能性も 北朝鮮戦でも改善されなかった課題とは (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshinori

【相手に読まれ、対策を打たれた後半】

 前に対する強度が高かったのは間違いない。

 序盤の先制点も、前田大然に対する縦パスがもつれたところを上田綺世が拾って左サイドへ流れ、フォローした田中碧が逆サイドにクロス。堂安律が頭で折り返し、南野拓実からリターンを受ける形で、堂安が再びマイナスのクロスを入れ、田中が蹴り込んでいる。縦パスに対し、これだけの選手が反応し続けたことが機先を制す結果になった。

 その後も縦に速い攻撃を繰り返し、好機も作っていた。「決定力」があったら、楽に勝っていた試合だろう。ただ、これ以上の回数を望むのは難しく、かなり足を使い、動きのダイナミックさは徐々に小さくなり、単調にもなっていった。

 必然として相手に読まれ、対策を打たれる。

 後半は相手の鋭い出足に潰されるシーンが増えた。縦に速い攻撃、ではなく、蹴り込むプレーになってしまい、精度が低くなったら、ロストが相次ぐのは自明の理。GK鈴木彩艶がアバウトにロングボールを蹴る場面は象徴的だった。

 前半はトップ下に入った南野拓実がキーマンで、彼がライン間に入って布石を打てていた。縦一辺倒に対し、攻撃の広がりを与えていたと言える。南野が自陣でボールを奪い返し、そのままカウンターを発動、バックラインの前で再びリターンを受け、堂安に出したパスからの決定機など鮮やかだった。

 しかし、後半は南野が潰される機会が増えていた。後半6分に北朝鮮のチェ・オクチョルという選手が投入されると、日本の左サイドは明らかに後手に回り、伊藤洋輝はイエローを献上。一時は瓦解寸前だった。

 そこで森保監督は「いい守りがいい攻めを作る」という原点に戻る。遠藤航を入れただけでなく、5バックに変更し、スピードのある浅野拓磨も投入。守備を分厚く、走力強度を高め、最後は挽回した。

 しかし、これがアジアカップのように力の差が近い、もしくはW杯で対戦する力が上の相手だったら、劣勢から飲み込まれていたのではないか?

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