トルシエ監督に聞いた――ベトナム代表に日本人選手をひとり連れていけるとしたら誰にするか?

  • 篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko
  • フローラン・ダバディ●通訳

フィリップ・トルシエインタビュー(後編)

現在の日本代表について語るトルシエ監督。photo by Fujimaki Goh現在の日本代表について語るトルシエ監督。photo by Fujimaki Gohこの記事に関連する写真を見る

前編◆トルシエが見た森保ジャパンの現状>>

【日本はアジアでリードを奪われることに慣れていなかった】

――今回のアジアカップで、日本はすべての試合で失点しました。戦術的な部分で問題点が見受けられましたか。

フィリップ・トルシエ(以下、トルシエ)日本はアジアにおいて格上なので、ボールポゼッションスタイルの攻撃的なサッカーになります。そのために、ある程度守備ラインを高く維持しなければならず、裏のスペースが大きく空くというリスクがあります。

 それでも現代サッカーの強豪チームは、ボールを奪われてもすぐにゲーゲンプレッシングで奪い返す、というのが当たり前のようになっています。ただ、そこで私が思うのは、守備をする本当の意味から考えると、最近のDFはもはやDFではないということです。

 どういうことかというと、彼らも第2、第3のアタッカーとなっているんです。そうした最近のクラブや代表の強豪チームにおいてのチームバランスに関して、私は大きな疑問を持っています。

 DFは競り合いに勝つことよりも、ボールを奪ってそれをすぐに自分たちの攻撃につなげることのほう、その方法を早く考えすぎていると思います。カウンタープレッシングで一生懸命走って戻る、1対1に勝つ、というのがベースであって、守備はブロックを下げて歯を食いしばり、辛抱強く守らなければいけない、ということを忘れてしまっているのでは? と思ってしまいます。

 それから、日本はアジアでリードを奪われることに慣れていないから焦ってしまったと思います。そこで、日本の選手から「自分で状況を打開しなければいけない」「点を取られたら、そのミスを自分で取り戻さなければいけない」という過剰なプレッシャーを感じているのではないか、と度々感じました。そういった場合でも、本来は「チームで取り返す」というメンタリティが必要だったと思います。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る