日本代表の「衝撃的敗戦」はなぜ起きたか 機能的な攻撃のなさが守備崩壊を招いた (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 先述のとおり、三笘がウイングプレーを披露した機会はわずか2回。後半のなかば、久保が奪われてはいけない位置で軽業に走ってボールを奪われ、ピンチを誘発する原因を作れば、堂安も一本調子に内へ切り込むばかりで縦には勝負できずに終わった。上田綺世はボールを収めることに汲々とし、アタッカーとしての怖さに欠けた。

 4人のアタッカー陣が機能的に攻撃できなかったことが危ない守備を招いた原因だ。「いい攻撃からいい守備」ができず、ペースを維持することができなかった。これはセンターバックの守備力を問うより、はるかに重要な問題だ。

 森保監督は試合後の会見で「責任のすべては私にあります」と述べている。だがそのサラッとした口調に、これだけの事件を引き起こした当事者としての自覚をうかがうことはできなかった。

 いい攻撃からいい守備へ。ボールを奪われることを想定しながら、その位置や場所にこだわりながら攻撃を遂行する。日本に必要な指導者は、キチンとした攻撃を指導できる人物だ。森保監督では難しいとは、アジアカップ5試合を見ての実感である。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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