久保建英がバーレーン戦でアジアカップ初得点も全開にならない理由 日本代表とレアル・ソシエダの違い (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【コンビネーションが乏しく攻撃は単発】

 したがって、バーレーン戦で久保のプレーが劇的によくなったというよりも、「久保自身がそうせざるを得ない状況で仕事を効率化させた」と言うべきだろう。チームのプレー内容も、劇的に改善されたわけではない。久保が中盤に落ちる回数が減ったことで、前線とバックラインの間延びも目立ち、FIFAランキング86位(日本は17位)の相手を攻撃で圧倒できなかったのが現実だ。

 率直に言って、森保ジャパンで久保の才能は半分も引き出されていない。

 たとえば久保は、何度もいいタイミングで足元にボールを要求しながら下がったが、パスが付けられる機会は少なかった。リスクとの天秤だろうが、チームとしての共通理解ができていない。55分、板倉滉が果敢に久保の足元につけた時、久保は周りを敵に囲まれながら鮮やかにターンし、左足で堂安にパス。この一瞬で防衛ラインを破っていた。堂安のパスはやや中途半端で、上田が抜け出したもののオフサイドの判定だったが......。

 久保は相手の寄せを怖がっていない。むしろ自分に引き寄せてパスを受け、味方にアドバンテージを与えている。前半、中山雄太のパスを自陣で受けた時、上田にフリック。リターンを受け、敵が削ってきたところをダイレクトで上田へ送るシーンがあった。これが、その後の波状攻撃につながって、久保のCKから上田が豪快なヘディングシュートも見せた。

 久保は上田との連係は悪くなかった。しかし、3人目、4人目のコンビネーションが乏しく、単発。彼が作り出す渦が、大きなうねりになっていない。それがラ・レアルとの違いだ。

「タケ(久保)はどのような状況でもプレーをキャンセルし、ベストのプレーを選択できる。彼は左利きだが、右からでも左からでもボールを持ち出せる。だからプレーを読みきれない。選択肢を絞りにくいから、守る側にとっては相当に骨が折れる」

 ラ・レアルでクラブ史上最多出場を誇る伝説のセンターバック、アルベルト・ゴリスが現地取材でそう答えていた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る