サッカー日本代表はイラクに敗れて当然 前半データ上でも圧倒されて監督の交代策も後手 (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【数字上も完敗の前半】

 まず、この試合で日本を最も悩ませていたのが、イラクの徹底したロングボール戦術だった。この試合に敗れるまで、国際Aマッチ10連勝を記録していた日本ではあるが、その間、ここまで中盤を省略してロングボールを放り込んでくる相手と対戦したことはなかった。

 ロングボールを蹴るというのは、すなわち相手にボールを与えることを前提とする戦術だ。現代サッカーにおいては、発展途上の代表チームでもしっかりビルドアップを試みて、ボールをつなごうとするのがトレンドなだけに、珍しい戦い方と言える。

 しかし、イラクのスペイン人監督ヘスス・カサスは、日本対策として敢えてその古典的な戦法を採用した。狙いは明確。日本が得意とするハイプレスからのショートカウンターを回避することと、ポストプレーを得意とする強力なストライカーの18番(アイメン・フセイン)を最大限に生かすためだ。

 実際、その効果はてきめんだった。前半終了間際に負傷を訴えてハーフタイムで退いた18番だが、試合開始から前線のターゲットマンとして大車輪の活躍。前半だけで長短合わせて計17本のパスを受け、そのうち12本を収めるなど、板倉滉や谷口彰悟、時には遠藤航とのデュエルで抜群の強さを発揮した。

 これにより、日本は守備時にDFラインを高くキープできず、結果的にコンパクトさを失った。また、イラクの2列目(17番、8番、7番)もボールキープするだけの十分な技術の持ち主だったため、日本はミドルゾーンでのボール回収もままならない状態となった。

 結局、18番は試合開始早々5分の先制点と、前半アディショナルタイムの追加点をマーク。ボール保持を放棄したイラクにとっては、狙い通りの前半だったと言える。

 いい守備ができない日本は、攻撃でも苦しんだ。とくに1トップに浅野拓磨、2列目に右から伊東純也、久保建英、南野拓実が配置された前半は、センターバック(CB)やボランチがボールを持って顔を上げても、縦パスの出しどころが見つからない状態が続いた。主な原因は、前線の選手のアンバランスなポジショニングにあった。

 イラクの布陣は4-2-3-1。本来であれば、イラクの最終ライン4人に対して、日本は両サイドに幅をとって前線に5人が立ち、ライン間でボールを受けたいところ。しかし、南野が自身の得意な中央エリアに立つことが多く、右ウイングを主戦場とする久保も右寄りでプレー。それを考慮して伊東は右の大外に立ったが、中央で南野、浅野、久保が重なってしまい、左の大外がぽっかりと空く現象が起きた。

 そのスペースを使ったのは、ピストンやクロス供給が得意とは言えない左サイドバックの伊藤洋輝で、日本が前半に記録した8本のクロスのうち3本を供給したものの、どれも相手DFに難なくクリアされている。

 とにかく攻守共にいいところがなかった前半は、シュート数もイラクの5本(枠内3本)に対して3本(枠内0本)しかなく、チャンスらしいチャンスもなかったというのが実際のところだった。そういう意味で、前半の0-2というスコアは論理的だった。

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