谷口彰悟が思い出す、初めて日本代表のユニフォームを手に取った日「今も袖を通すたびに身が引き締まる」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke

 ワールドカップの本大会やアジアカップといったA代表が臨む"それ"とは比較できる規模ではないが、グループステージを経て、決勝トーナメントを戦っていくユニバーシアードは、チームとして戦う一体感や勢いの重要性を学んだ。

 個人としてチームに慣れることはもちろん、ひとつの目標に向かって進んでいく一体感。その思いが強ければ強いほど、増せば増すほど、チームの力は倍増していった。

 たとえば、苦しい時に途中出場した選手がゴールを決めてヒーローになる。たとえば、その選手がピッチにいるだけで、チームを勢いづかせ、試合の流れを引き寄せる。そういった個々のパワーが、チームという"円"のなかに凝縮され、力として発揮されていく。自分にとって「チームとはまさに生き物である」ことを感じたのが、ユニバーシアードだった。

 2011年に深圳で優勝したうれしさ、2013年にカザンで3位に終わった悔しさとともに、大会を勝ち抜くために必要なこと、大切なことを感じた機会だった。

 だから──。

 2月11日の決勝まで、約1カ月にわたって行なわれるAFCアジアカップ2024も、期間中はさまざまなことが起きるだろう。累積警告などで次の試合に出場できない、または大会期間中に誰かが負傷する可能性だってある。

そうした出来事に左右されずに、チームとして乗り越えられるかどうか。それには、先発する11人だけでなく、メンバーの全員が「チーム」という単位を意識して戦い抜く必要がある。

 実際、いかに準備が大事かは、カタールで戦った2022年のワールドカップで自分自身が身をもって感じた。スタメンではなくとも、途中交代に備える、もしくは次の試合に向けて準備を続ける。その姿勢があったから、自分はグループステージ最後のスペイン戦と、ラウンド16のクロアチア戦のピッチに立てた。

 準備をし続ける姿勢は、今大会でも変わらず示し、チーム全体に共有させていきたい。それぞれが準備を怠らず、出場機会を待ち続け、得たチャンスで結果を残す。

 個々の力が、大きな円になり凝縮された時、膨大なパワーとなることは、何よりも僕自身が知っている。

◆第14回につづく>>


【profile】
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2022年末、カタールのアル・ラーヤンSCに完全移籍。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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