日本代表、ベトナムに勝利も問題を露呈 1トップの周辺でボールが収まらない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【光る選手交代も】

 ウイング頼みのサッカー。しかし真ん中が不安定だと、その影響はサイドにも表れる。前半、内寄りで構えすぎた伊東純也のポジショニングにそれは象徴される。結果として左、右、中央のバランスは乱れ、攻撃に怖さが生まれなかった。グサッと刺さらない迫力に欠けるパスワーク。ひと言でいえばそんな感じだ。

 後半40分、久保建英との絡みで中央から上田が決めた4点目は、そうした意味では上々だったが、この時間のベトナムはすっかり弱っていて、両者の攻撃に無抵抗だった。割り引いて考えるべきである。

 久保が入ったのはその1分前で、代わった相手は南野だった。そのまま1トップ下でプレーしたが、鎌田がいない今回、このポジションは久保か南野か(旗手怜央という手もあるが)の二択になる。しかし久保もポジション的な最適解は右ウイングだ。ゴールを背にしたポストプレーが得意ではないので、南野同様、1トップ下に居座ろうとしない。サイドに流れてプレーする。

 弱点はハッキリしているにもかかわらず、打つ手なし。これが森保ジャパンの現状だ。相手のレベルが低いので、致命的な問題に発展することなく大会を終えるかもしれない。だとすれば、それはレベルの高くない相手と戦うデメリットになる。アジアカップを制しても弱点は解消されない可能性が高い。

 一方でこの試合、森保監督はひとつ光る采配をした。活躍していた菅原、守田英正を下げ、毎熊晟矢、佐野海舟を投入した後半32分の交代だ。23人いるフィールドプレーヤーのなかで、序列の低そうなJリーガーふたりは、1点差という緊張感のあるなかでプレーすることになった。これまでの森保采配にはなかった余裕である。7戦戦うことになる決勝までの道のりを考えた交代。決勝戦を前に息切れした前回大会から得た教訓だと考えたい。

 次戦のイラク戦(1月19日)をどんなスタメンで戦うか。7戦目までの道のりを占う意味でも、目を凝らしたい。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る