なぜサッカー日本代表はタイ戦後半だけ5ゴール量産? 前後半の攻撃の違いは何か (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【攻撃の幅と背後をとる動き】

 それとは別に、前半と後半では日本の攻撃方法に違いがあった。とくに目についたのは、自陣ペナルティーエリア付近で人数をかけて守る相手に対するアプローチだ。それはどのようにスペースをつくり、どのスペースをどのように使うか、の違いとも言える。

 ポイントとなっていたのは、前半に4-2-3-1の1トップ下に入った伊藤涼太郎と、後半から同ポジションでプレーした堂安律と南野拓実(68分以降)で、それはそれぞれのキャラの違いとも言えた。

 前半に1トップ下に入った伊藤(涼)は、基本的に中央エリアを動き回ってボールをもらい、前線にスペースがない場合は下がって受けてから攻撃を展開。そのため、右ウイングの伊東純也が中央寄りでプレーすると、1トップの細谷真大も含めて中央エリアが渋滞。左右のバランスも悪く、中央の密集を破れず攻撃全体に停滞感が生まれていた。

 しかし、後半に堂安が1トップ下に入るとそれが解消された。伊東が中央に入る時は、堂安が主戦場の右サイドに移動し、さらに左サイドも代表デビューした奥抜侃志から中村敬斗に代わったことで両サイドに起点が生まれ、相手DF網は左右に広がらざるを得なくなった。

 実際、51分に生まれた日本の先制ゴールは、そうやって相手ペナルティーエリア中央に生まれたスペースに、ボランチの田中碧が飛び込んだことで生まれている。

 そして68分に南野が1トップ下に入り、堂安が右ウイングに移動すると、さらに攻撃は活性化した。とりわけ相手の守備陣を混乱させたのが、南野のDFラインの背後をとる動きだった。

 その象徴的なシーンが69分。右サイドで田中からのパスを受けた堂安が、右サイドバックの毎熊晟矢が空けた相手DFライン裏のスペースを狙った南野にスルーパス。ペナルティーエリア内で受けた南野がシュートを放ったシーンだ(シュートは枠外)。

 72分に生まれた日本の2点目は、約1分間ボールを保持したうえでフィニッシュした、この試合におけるベストゴールだった。最後の崩しは、ボランチの佐野海舟が中村とのコンビネーションで相手ペナルティーエリア内のスペースに潜り込み、クロスを供給。南野のシュートはGKに阻まれたが、こぼれを中村が詰めてネットを揺らした。

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