なぜサッカー日本代表はタイ戦後半だけ5ゴール量産? 前後半の攻撃の違いは何か

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

サッカー日本代表が5-0と大勝した元日のタイ戦。前半0-0ながら、後半5ゴールと一気に得点を重ねたが、前後半でボール支配率やシュート数にはほとんど変化がなかった。では後半に何が変わったのか。前後半に見られた現象と攻撃方法を分析した。

【常連メンバー出場の後半に5ゴール】

 史上初めて元日に行なわれた日本代表戦は、昨年11月に就任したばかりの石井正忠新監督率いるタイに対し、日本が後半に5ゴールを挙げて5-0で完勝。目前に控えるアジアカップに向け、新年早々から幸先の良いスタートを切った。

サッカー日本代表タイ戦の後半に堂安律は攻撃を活性化させた photo by Sano Mikiサッカー日本代表タイ戦の後半に堂安律は攻撃を活性化させた photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る とはいえ、試合後に発表されたアジアカップの登録メンバー26人の顔ぶれと比較すれば、このタイ戦にスタメン出場した選手の約半数が「代表予備軍」であったことは明白。そういう意味では、必ずしもアジアカップの布石となる試合とは言いきれないが、それでもいくつかの好材料は見受けられた。

 まず、この試合を振り返ると、代表予備軍メインで戦った前半とアジアカップメンバーが投入された後半に大きく分けられる。そのなかで、日本は前半にゴールが奪えず、後半になってから5ゴールを量産した。

 後半開始から経験値の高い代表の常連メンバーが次々とピッチに立ったことが、結果的に試合の流れを大きく変える格好となったわけだが、その一方で、スタッツは前後半ほぼ同じだった。日本のボール支配率は前半が55.8%、後半が56.6%と大差はなく、シュート数は前半11本、後半13本と、2本の差しかなかった。

 では、前半と後半では、日本の攻撃のどこに違いがあり、それがどのように影響して5ゴールという結果につながったのか。

 それを探る前に、前提として頭に入れておきたい点がある。

 ひとつは、後半からレギュラー組をピッチに送り込んだ日本と違い、国内リーグ戦の合間を縫って来日したタイは、選手起用に時間制限を設けるなど、後半は戦力的にダウングレードしてしまったこと。

 また、試合後の会見で石井監督が「タイ代表は何点取られても下がることなく、前からチャレンジに行った」と語ったように、失点したタイが前半より前に出てゴールを目指したことで、後半はよりスペースが生まれやすい戦況になっていた点も無視できない。

 当然ながら、戦力ダウンした相手がよりスペースを与えてくれたうえ、日本は戦力がアップグレードした11人で戦ったことで攻撃が活性化。後半のゴール量産には、そうしたバックグラウンドも間違いなく影響していた。

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