森保一監督に聞いたカタールW杯・勝利の分岐点「浅野拓磨を起用した判断はどこにあったの?」 (6ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

 だから、ドイツに勝って、スペインにも勝ったことは、日本サッカーに関わる多くの人たちに勇気を与えたと思います。先ほども話しましたけど、国内の選手はもちろん、指導者もそう。育成年代の指導者もそう。自分が今やっている仕事がそこにつながっていると思えた瞬間だったでしょうから。

寿人 僕も今、A級ライセンスを取りに行っているんですけど、一緒に講習を受けているのは育成年代を指導している人が多いんですよ。やっぱり、ワールドカップ以後のこの1年で、指導者のモチベーションは相当高くなっていますよね。「日常が世界につながっていく」ということをリアルに感じられるようになったからだと思います。

森保 それはうれしいですね。そこに代表活動の意義があると僕は思っているので。

 憲剛を育てたとか、寿人を育てたっていう人だけじゃなくて、やっぱり日本のサッカーの発展を願って、育成、普及のところからやってくれている人たちの尽力があってこそ、今のA代表があるんです。それで我々が結果を出すことが、またそういう方たちのモチベーションにつながればうれしいですね。

憲剛 育成の指導現場を見ていると、かなり変わってきていますよ。インテンシティもそうですし、日本人ならではのパスワークという部分もそう。A代表が結果を出してくれたからこそ、みんな自信を持って言えるんです。

 たとえば選手にハードワークを求めれば、彼らはやるしかない。なぜなら、代表選手が普通にハードワークをしているから。そこはもう、説得力しかないんですよ。

森保 強度とか球際とかだけに走るつもりはないけど、日本はもともと技術力が高い国だと思うんです。だからこそ、技術を発揮するための強度を上げていくことが重要だと思っています。技術力だけでは強度に凌駕されることはあるけれど、技術力があったうえで強度を上げることが、これからより求められるとこかなと思っています。

(つづく)

◆新春スペシャル(4)>>今後の日本代表は「これまでのやり方を壊す」


【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

森保一(もりやす・はじめ)
1968年8月23日生まれ、長崎県長崎市出身。1987年に長崎日大高からマツダに入団。1992年にハンス・オフト率いる日本代表に初招集され、翌年「ドーハの悲劇」を経験。サンフレッチェ広島→京都パープルサンガ→ベガルタ仙台を経て2004年1月に現役引退。引退後はコーチとして広島とアルビレックス新潟で経験を積み、2012年に広島の監督に就任。3度のJ1制覇を成し遂げる。2017年から東京五輪を目指すU-23代表監督となり、2018年からA代表監督にも就任。2022年カタールW杯の成績を評価されて同年12月に続投が決定した。日本代表・通算35試合1得点。ポジション=MF。身長174cm。

★中村俊輔選手との鼎談全文(合計33ページ)収録★
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webスポルティーバの大人気対談
「中村憲剛×佐藤寿人 日本サッカー向上委員会」が一冊の本になった!

 書籍名は「ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話」

 ふたりが願う「日本サッカーのさらなる向上」を実現するため、さまざまなテーマに沿って対談形式で本音をぶつけあう。また、カタールワールドカップ直前企画として「ふたりの思い出のワールドカップこぼれ話」、さらにはふたりが熱望した元日本代表MF中村俊輔選手を招いて豪華な「スペシャル鼎談」も収録。プロとして20年近く現役を続けられたふたりの言葉は、「サッカー以外の人生」にもきっと役に立つ。

<中村憲剛さんからのコメント>
「長く第一線でやれたのには理由があります。その要因を紐解くことは、サッカーだけではなく、おそらくサッカー以外の社会や組織にも当てはまること。その『ヒント』になるようなものが、この本には詰められていると思います」

<佐藤寿人さんからのコメント>
「僕らはスポーツの世界で経験してきたことを話していますけど、それをうまく変換して『自分事』として捉えていただき、それぞれの環境で生かしてもらえたら。サッカーをやってきたなかで学んだことは、人生にも役立つんです」

【書籍名】 ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話
【発 行】 集英社
【発 売】 2022年11月14日(月)
【定 価】 本体1,700円+税

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プロフィール

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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