中村憲剛「試合に出たいです」と川口能活に吐露 南アフリカW杯でレギュラーから外され、救われた言葉 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

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 W杯出場という夢の実現を目前にして、まさに苦境に立たされた中村だったが、彼の"雑草魂"が失せることはなかった。一度は諦めかけたが、すぐに気持ちを切り替えて、懸命にリハビリに励んだ。その甲斐あって、W杯メンバーが発表された5月10日、その名が呼ばれた。

 ただ、中村がチームを離れていた際、日本代表は4月の親善試合、セルビア戦で0-3と惨敗を喫した。そのうえ、中村も復帰して途中出場したW杯壮行試合、韓国戦も0-2と苦杯をなめた。

 その間、日本代表に対する期待はどんどん萎んでいって、岡田の代表監督更迭論まで飛び出していた。韓国戦に負けると、そうした声はさらに膨らんで、チームは暗澹たるムードに覆われた。

「韓国戦で負けたあとは、『これ、ヤバい』って感じでした。サポーターも、メディアもそうだし、自分たちも『このままW杯に行って大丈夫なのか』という大きな不安が生じていた」

 韓国戦の翌日、「岡田監督更迭か!?」といった報道が流れ、選手たちもざわついた。そうしたなか、埼玉スタジアムのサブグラウンドでリカバリーの練習が行なわれたが、選手、スタッフ誰もが何もなかったかのように振る舞い、それがまた、異様な雰囲気を醸し出していた。

 W杯本番を前にして、前線からのプレスが機能せず、結果も出せなかった日本代表は、間違いなく危機的な状況にあった。そこで、岡田は日本を出発したあと、その状況を打開するために大きな賭けに出た。レギュラーメンバーを入れ替え、システムも変更。キャプテンまで交代した。

 その"荒治療"によって、本番直前のテストマッチでは一定の効果が見て取れた。イングランドに1-2、コートジボワールに0-2で敗れたものの、初戦の4日前に行なわれたジンバブエとの試合(30分×3本)では、課題の守備が安定し失点なく戦えた。

「イングランド戦、コートジボワール戦と4-2-3-1で戦ってきて敗れ、(テストマッチ後の)コートジボワールとの3本目の練習試合で4-3-3というか、4-1-4-1というシステムを初めて試したんです。僕もその3本目に出場しましたが、『このシステム、結構いいかもしれない』と思いました。その後、どうするんだろうなと思っていたら、ジンバブエ戦でもそのシステムをそのまま採用。

 それまでは前からプレッシングをして、連続して展開していく感じだったんですけど、基本的に守備ブロックをしっかり作ってカウンターという形へ。(内容的には)耐える戦い方でしたが、阿部ちゃんをアンカーに置く形がチームとしては機能していた。(本田)圭佑を最前線に置いて、『(本番も)このスタイルでいくんだな』と思いました」

 本番を間近に控えての大胆な戦術変更。それによって、チームには微かな光が見え始めていたが、選手たちは複雑な思いを抱えていた。特に、それまでレギュラーだった選手たちの空気は明らかに重かった。

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