日本代表メンバー発表で見えた課題 構造的に不足しているふたつのポジションとは (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 浅野はポストプレーを細谷以上に不得手とする。「鎌田」なくして1トップは務まらない。そのスピードはウイングのほうが生きると見るが、ウイングは人材の宝庫だ。三笘、久保の両エースを呼ばなくても、大きな問題にはならない。9月の欧州遠征では、今回復帰した中村も戦力になることを証明している。

 今や日本サッカー界最大のストロングポイントとなったウイングと比較すると、1トップの人材難は厳しく映る。ポストプレーの得意な選手が鎌田しかいない1トップ下とのバランスも悪い。

 1トップ下の候補は、今回のメンバーでは南野、初代表の伊藤涼あたりになるが、両者とも前を向いてプレーしたいゲームメーカータイプだ。ゴールを背にしたプレーは得意とは言えない。川村は、アタッカーと言うよりMF的だ。

 ポストプレーができるセンタープレーヤーがいない。半分ほどメンバーを入れ替えてもこの傾向に変わりはない。日本サッカーが抱える構造的な問題が今回のメンバー発表を通してあらためて露呈した恰好だ。

 真ん中の高い位置にボールが収まらないとパスワークは円滑にならない。左、真ん中、右という3つある攻撃ルートのうち、2つしか機能しなければ、攻撃はバラエティに富まない。安定感も生まれない。王道を行くサッカーはできないのだ。この課題とどう向き合うか。日本代表浮沈のカギだと筆者は見る。大迫勇也の穴は埋まっていないのである。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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