久保建英のシリア戦での活躍にスペインメディアも注目 「久保交響曲」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 photo by Komiya Yoshiyuki

【「ほしいところでゴールを奪ってくれる」】

 シリア戦でトップ下として自由を与えられた久保は、その真価を見せた。相手のレベルが落ちたことで、わかりやすく"凄み"が伝わったとも言えるかもしれない。ヨーロッパとは一線を画す、緩いマーキングと組織的でもない守備を面白いように切り裂いた。

 32分、やや下がってから右サイドの伊東純也からボールを受けた久保は、ひとりでやって来たマーカーを翻弄した。前へ運びながらカットイン。相手は俊敏さについていけず、寄せも甘くなった。そして一瞬で拵えた軌道に向けて、左足で鋭いシュートを打ち込んだ。

 チームは30分過ぎまで、ゴールに迫りながらネットを揺らせず、じりじりし始めていただけに、値千金の一撃だった。

「タケ(久保)がファンに愛されるのは、本当にほしいところでゴールを奪って、勝利をもたらしてくれるからだ」

 ラ・レアルの関係者は説明していたが、シリア戦でも存在感を証明した。昨シーズン、リーガでは9得点した試合は9戦全勝と"不敗神話"を作った。今シーズンも、5得点で3勝1分けと負けていない。とりわけ本拠地レアレ・アレーナでの久保のゴールは火が燃え盛るような魔力があって、チームが勢いづくのだ。

 シリア戦では、リード後も久保は手を緩めていない。40分には右サイドで伊東、菅原由勢とトライアングルを作りながらパス交換で守備陣を崩す。直接のアシストは伊東だったし、最後に仕留めたのは上田綺世だったが、久保のコンビネーション力は際立っていた。

 後半立ち上がりにはFKで自らが蹴らず、ちょこんとボールを動かし、菅原の右足ミドルによる4点目をアシストした。久保は敵GKを幻惑するように、一瞬、体重を移動させたところを逆方向へ、という狙いどおりだった。久保が発する脅威が敵を覆っていたことで生まれたゴールとも言える。

 その後も久保は下がってボールを受けながら、いくつもチャンスを作り出し、後半31分には"任務完了"で堂安律と代わってベンチへ下がっている。

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