日本代表のトップ下は久保建英か鎌田大地か 選択肢が増えたことこそW杯予選の収穫 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【日本代表にひさびさの「キック自慢」】

 その4-2-3-1は、右に重心が偏る布陣になる。攻撃面では、左、右、真ん中と3本あるルートのなかで、真ん中が最も脆弱になる。1トップ下付近にボールが収まるシーンが少ないのだ。前回(10月のカナダ戦、チュニジア戦)もそうだが、鎌田がチームを離れると、センタープレーヤーの不在は、厳然とした事実として浮上する。攻撃の3本のルートは描きにくくなり、正統な攻撃を実践できなくなる。

 ここがW杯ベスト8以上の道のりに最も克服が必要な課題だと考えるが、それはともかく、久保がシリア戦の前半32分に蹴り込んだ先制ゴールは、1トップ下と右インサイドハーフの中間に位置するポイントから放った一撃だった。センタープレーヤー不在が気になる一方で、久保のキックに目が奪われるシーンは増えている。「キック自慢」の選手が最近の日本代表にはいなかっただけに、貴重な存在に映る。

 久保は3点目のシーンにも、ゴールの2つ手前で絡んでいる。上田のゴールを演出した伊東に送った左足パスである。内に行くと見せて縦へ切り返すフェイントと同種の、相手の逆を突くプレーだった。

 鎌田か久保か。1トップ下は難しい選択になっている。だがW杯本番を2年半後に控える現段階としては、どちらがベストかを考えるより、選択肢が増えたと捉えたほうが賢明だろう。今、白黒つける必要はまったくない。

 シリアの選手個々の力はミャンマーより上だ。ミャンマー戦が5-0なら、シリア相手には3-0ぐらいかと考えるのが自然だ。だが結果は5-0と、ミャンマー戦と同じだった。シリアがオーソドックスな4バックで特段、引いて構えてこなかったことも幸いしたが、日本がミャンマー戦よりいいサッカーを披露したことも追い打ちを掛けた。

 進歩のあとが見られたのは、先述の3本の矢の中で2本の矢に相当するサイド攻撃だった。堂安律(右ウイング)と毎熊晟矢(右サイドバック=SB)で組んだ右サイドに問題を残したミャンマー戦とは一変。サイドアタッカー各2人の関係は、左(伊藤、浅野)、右(菅原、伊東)ともミャンマー戦より良好で、両翼に攻撃の起点を築く、通り一遍ではないサイド攻撃ができた。

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