U-17日本代表が決勝T1回戦で涙も日本代表の未来を明るくする望外の「感覚」を得た (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 はっきりと数字にも表れているプレー精度の差が、すべて疲労に起因するものとは考えにくい。

 確かに、日本に攻撃機会がなかったわけではない。

 だが、問題となるのは、そこにどれだけ得点の可能性が生まれていたのか、である。

 佐藤が「自分のドリブルやテクニックは発揮できたし、やれるなっていう感覚ももちろんあるが、そのなかでチームを勝たせるプレーや、結果的にゴールに結びつくプレーがまだまだ足りない」と話していたように、得点を決めるために必要なプレー精度の差が勝敗を分けた。そう見ることは可能だろう。

 しかしながら、また一方で、彼らがまだ17歳以下の選手たちであることも忘れてはならない。重要なのは、ここでの結果よりも、これが未来にどう生かされるか、であるからだ。

 だからだろうか、ある地元インドネシアの記者は泣き崩れる日本の選手たちを見て、不思議そうにこうつぶやいた。

「なぜ日本の選手たちは、あんなに泣いているんだ? まだU-17の大会なんだし、本当の勝負はこれから。あんなに悲しがる必要はないじゃないか」

 彼の言うとおりだろう。

 まだ10代の選手たちにはこれからいくらでもリベンジのチャンスは残されており、そのチャンスをつかみ取れるか否かは、彼ら次第だ。

 今大会の4試合を振り返れば、敗れたアルゼンチン戦にしても、後半はほぼ相手を圧倒し続けることができたし、同じくスペイン戦でも、前半はどちらに転んでも不思議のない勝負を繰り広げている。

 だからこそ、森山監督が喜ぶのも、選手たち自身が「どことやっても戦える」という感覚を実体験として得たことだ。

「彼らのU-17ワールドカップの旅は終わったが、ここからU-20ワールドカップもあるし、オリンピック、ワールドカップと、彼らの旅はこれから大海原に出ていくところ。ここでの成長は大きいし、どことやっても戦えるんだという自信を持って、また成長の速度を上げてくれるんじゃないかと思う」

 五分の条件でスペインと戦っていたら、どんな結果になっていたのだろうか。

 もちろん、そんな"たられば"を考えないわけではない。だが、その答えは、いずれ彼らが別の舞台で出してくれるはずである。

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