U-22日本代表がアルゼンチンに大勝も露呈した日本サッカーの構造的問題 大岩ジャパンに期待すること (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ビルドアップの起点をサイドに】

 大岩監督は試合後の会見で「ビルドアップの方法として、サイドで数的優位を作りたい」と述べている。森保一監督より説明が具体的かつ明快で、なるほどと納得させられたが、一方でサイドにおいてA代表と似た症状を抱えていることも確かだ。実際はそこで数的優位を作れていなかった。

 サイド、特にライン際はピッチの廊下と言われる。そこで数的優位を作れば縦への推進力は増す。サイドは真ん中に比べてボールを奪われにくいので、そこでの攻防で優位に立つことはボール支配率の上昇に繋がる。ゲームのコントロールを可能にする。さらに、そこでボールを奪われても真ん中に比べ、自軍ゴールまでの距離は遠い。その分リスクは低下する。「サイドを制するものは試合を制する」のである。

 日本では「中盤を制するものは試合を制する」のほうが一般に浸透している概念だが、試合の模様をゴール裏からではなく(縦ではなく)、正面スタンド、バックスタンド側から、つまりピッチの横側から見れば、たとえば4-2-3-1の3の両サイドは、サイドアタッカーと言うより中盤選手に見える。

 アルゼンチン戦に出場した三戸舜介、山田楓喜(右)、佐藤恵允、松村雄太(左)は、そうした意味では中盤的ではなかった。ビルドアップに絡むことができなかった。ドリブルが得意なウインガーの域を脱し得なかった。もっと内側で、MF然と構えろと言っているのではない。ビルドアップの起点を真ん中ではなく、サイドに寄った場所にずらすべきと言っているのだ。展開の中心は真ん中ではなくサイド。濃いプレー、細かなパスワークを駆使するなら、ボールを奪われやすく奪われると危ない真ん中ではなくサイド。これがアルゼンチンに比べ、日本には浸透していなかった。

「サイドで数的優位を」と言いながら、真ん中中心主義が抜けきれていない。森保ジャパン、大岩ジャパンだけの問題ではない。女子も含めた、日本サッカーの癖。構造的な問題である。

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