「ここでやるしかねぇ!」U-17日本代表のラッキーボーイがまたも得点 若きタレント軍団がW杯でさらに奇跡を起こすか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 日本が反撃に転じる機会が増えてきた後半62分、連続攻撃からMF佐藤龍之介とのパス交換で右サイドを破ったDF柴田翔太郎が柔らかなクロスをゴール前に送ると、これをチームで最も小柄(165㎝)な高岡が、見事に頭で捉えた。

「柴田が本当にいいクロスを上げてくれたので、あそこは当てるだけ。ポジショニングも(相手DFの)間に入れてよかった」

 そんな本人の言葉どおり、高岡の値千金のゴールで日本は先制に成功した。

 森山監督曰く、ゲームプランは「0-0で引き分けか、できれば1-0で勝つ」。試合は、面白いように指揮官の思いどおりに進んでいた。ところが、指揮官苦心のゲームプランをも上回る、うれしいサプライズが待っていたのは、後半72分のことだ。

 首尾よく1点をリードし、セネガルの焦りにも乗じて逃げきり態勢に入った日本。だが、スキあらばと、ストライカーらしい貪欲さをみなぎらせていたのは、またしても高岡だった。

 相手DFがGKへとバックパスした瞬間、一気にGKとの距離を詰めるや、相手が対処するわずかな猶予すらも与えずにボールをかっさらい、そのまま追加点となるゴールを決めてしまったのである。

 してやったりの高岡が語る。

「あそこは(スピードに自信がある)自分の武器なので。『ここでやるしかねぇ!』と思って、(日本の守備はハイプレスではなく)リトリートしている時間だったけど、アグレッシブに自分で(プレスに行った)。決めることができたので、そこの判断はよかったのかなと思う」

 これでリードを2点に広げた日本は、最後の力を振り絞るセネガルから危ういシュートを浴びはしたものの、GK後藤亘の再三の好セーブもあり、逃げきり。無失点のまま歓喜の瞬間を迎えることとなった。

 終わってみれば2-0と、指揮官の想像すらも超える望外の快勝である。

 今大会3試合連続の4ゴールで得点ランクのトップに立った高岡は、タイトな日程にも「キツいっていうより、楽しいが勝って、疲労なんて忘れている」と笑い、こう続ける。

「初戦のポーランド戦でいい形で決めることができて、自分でも自信がついて、そこからアルゼンチンとやって、今日のセネガル戦と本当に自信もついているので、決勝トーナメントでもやっていけるかなと思う」

 それにしても、あとのない状況で若き日本代表が見せた、鮮やかな勝利だった。

「『頑張って(失点を)ゼロで抑えるぞ』と言うのは簡単だが、選手は本当にそれをやってのけた。集中力とハードワークと、最後は体を張るところが身についているので、そこは本当にすばらしいなと思う」

 森山監督も試合後、そう絶賛していたように、圧倒的な個人能力を誇るアフリカ王者を相手に、日本の選手たちは劣勢の時間を耐え、徐々に自分たちの時間を作り出すことで、90分という試合をしっかりとコントロールできていた。

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