「三笘薫の少年時代のプレー映像があれば...」才能ある選手を脱落させないために反町康治が考える技術委員長の仕事 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【コロンビアはミドル級で、日本はライト級だった】

 反町技術委員長がタレント・ディベロップメント・スキーム、通称「TDS」の構築の必要性を痛感したのは、昨冬のカタールワールドカップがきっかけだった。

 ドイツとスペインを破ったチームには、久保建英のように年代別の世界大会にすべて出場してきた選手がいれば、伊東純也のようにカタールワールドカップが初めての世界大会だった選手もいた。三笘薫もU-17やU-20のワールドカップには出場していない。

 カタールワールドカップを経て、日本代表の森保一監督は「ダブルチーム構想」を描く。同じ実力を持った選手を2チーム分保有したい、というものだ。

「誰が出ても同じぐらいの力を持っているチームをふたつ作るには、アンダーエイジのワールドカップから国際経験を積んだ選手を増やすことが必要になってくる。今やっとそういうふうになってきているけれど、伊東や三笘はU-17やU-20の代表に選ばれるレベルではなかったのか、それとも選手を選ぶ側に問題があったのかは、しっかりと検証していこうと思っている」

 パスウェイと呼ばれる選手の成長の道筋をつまびらかにすることで、日本代表の戦力をさらに充実したものにする。未来への種蒔きは、地道な作業の積み重ねだ。

 反町が技術委員長に就任した2020年3月は、新型コロナウイルス感染症がまさに世界を襲おうとしているタイミングだった。国際大会が相次いで延期や中止に追い込まれ、日本国内から海外への渡航や帰国後の行動に厳しい制限がかかった。

 今年6月のU-20ワールドカップに出場したU-20日本代表は、コロナによるパンデミックの影響を強く受けた世代である。国際的な強化が叶わなかった。

 反町技術委員長が静かにうなずく。

「渡航制限が緩和されてからは、海外での経験不足を取り戻そうと国際大会に参加したけれど、FIFAの公式戦とは相手の熱量がやはり違った、というのはある。日本にもうまいプレーヤーはたくさんいる。けれど、うまいだけでなく強くないといけない。

 今回(U-20ワールドカップ)のU-20日本代表は、プレーがドメスティックだったというか、力強さで見劣りした。ボクシングの階級で言うと、1-2で負けたコロンビアはミドル級で、日本はライト級だった」

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