17歳の遠藤航を反町康治はどう育てたのか?「デュエルの強さは、俺が教えたものではない」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【ボールをもらった時に、航は360度が見えている】

 試合の前々日や前日の練習とミーティングでは、相手の分析に基づいた戦略が刷り込まれていく。インプットしたものをアウトプットするレベルが、遠藤は高校生当時から高かった。

 反町が指揮する湘南は、運動量、切り替えの速さ、プレーの強度といったもので相手を上回ろうとした。そうした環境で揉まれた遠藤が、のちに「デュエル」を代名詞とするのは納得感があるが、反町は「俺が教えたものではない」と言う。

「球際で戦うというのは、もちろん強調していた。ただ、そのなかで航が際立って強かったかと言えば、決してそうではなかった。相手がこう来たらボールを取れるとかいうのを、経験値としてどんどん蓄積して、サッカーIQに組み込まれていったと思うんだ」

 先天的に持つ強みもあった。ヘディングの強さである。身長は180cmに満たないが、湘南在籍時から空中戦をストロングポイントとしてきた。リバプール加入後初ゴールも、ヘディングで決めている。

「航のヘディングはタイミングがいい。こちらのリスタートに相手がマンツーマンでついてきたら、どのチームもCBとCFに背の高い選手をつけてくる。向こうの4番目か5番目の選手が、航をマークする。そこでミスマッチが起きて点を取れる可能性が高まる、というのは計算していた。身体のぶつかり合いで、弾き飛ばされない。重心がしっかりしているんだ」

 反町が2011年に湘南の監督から退くことで、遠藤との直接的な関わりは終わりを告げることになる。それでも、対戦相手の選手として、技術委員長と日本代表選手として、遠藤の歩みを追跡してきた。

「インターナショナルなレベルで戦うと考えた時に、ボランチは適正ポジションかなと思う。うしろからボールをもらった時に、航は360度が見えている。

 相手がこっちから来ていれば逆にコントロールするし、来ていなければスッとターンする。レイオフをして縦パスを入れるとか、そういうプレーができるボランチは、実はそれほど多くない。俺が監督だった当時はそこまで洗練されていなかったけれど、その後の経験でレベルアップしていったんだと思う」

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