W杯アジア2次予選にオールスターを招集する前時代性 ミャンマーに全力で立ち向かう必要はあるのか? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【仕事の分担が明確でないサッカー協会】

 森保監督は世界で最もゆとりがある監督なのである。この現実とどう向き合うかについて議論しようとしているにもかかわらず、森保監督は「大変だ」と言って、建設的な議論を避けようとする。

 ただし前にも述べたが、これは森保監督の問題というより日本サッカー協会の問題だ。海外組の増加とそれに伴う代表強化の関係を、これからどうしていくべきかを語るのは会長あるいは技術委員長の仕事である。この日の会見で森保監督の傍らに座っていた山本昌邦ナショナルチームダイレクターも例外ではない。そのあたりの仕事分担が、いまの協会はまるで明確でない。

 カタールW杯が終わった後、森保監督の続投会見で、その傍らに鎮座していた反町康治技術委員長はなぜいないのか。なぜ代わって山本昌邦氏が登場したのか。森保監督との仕事分担や職務権限はどうなっているのか。日本サッカーに大きな転換期が訪れているにもかかわらず、協会組織は不透明な状態にある。

 選手はそれに翻弄されている。8.5枠という世界一甘いW杯予選の環境。代表選手の9割近くが海外組という現実。さらに本場欧州と極東の国、日本との距離を加味すれば、代表チームは強化の概念を少なからず変更する必要がある。欧州組の選手、あるいは欧州でプレーした経験のある選手もそう考えているはずだ。

 問われているのは、4年に1度のW杯本大会に向けて、"ベストメンバー度"をどう高めていくかだ。外国にはサンプルがいくらでもある。対戦相手のレベルに応じ、それに相応しいメンバーで臨む。強者相手には全力で立ち向かうが、弱者相手には実験色を強めたメンバーで臨む。強豪チームはなかなかベストメンバーを編成しようとしない。その必然性が低い試合が多いからだ。

 予選しかり。森保ジャパンは前回のアジア2次予選でミャンマー、モンゴル相手にホームでそれぞれ10-0、14-0の勝利を収めている。ともに、オールスターキャストで臨んでいるが、欧州の強国はそのような真似はしない。

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