冨安健洋の存在感を思い知った日本代表の連勝劇 福田正博は鈴木彩艶にも期待 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

【冨安健洋の圧倒的な存在感】

 その守備の核となっている選手のうち、圧倒的な存在感を放っているのが冨安だ。チュニジア戦で象徴的だったのは、彼のDFラインの設定だった。

 守備の選手というのは相手にDFラインを突破されることを恐れ、ボールを持たれたらDFラインを下げるものだ。しかし、冨安の場合は、よほどのことがない限りラインを下げない。つねに前に前にと押し上げていた。

 この冨安の攻撃的な姿勢は相手選手にプレッシャーをかけたが、味方の選手も対応できないシーンがあった。ハーフウェイラインから自陣に入ったあたりで相手にボールを持たれた時、日本代表のサイドバック(SB)は何度となく下がろうとしたが、CBの冨安がラインを下げないのを見て慌てて高い位置にポジションを戻していた。

 SBだけではない。CBのパートナーの板倉が冨安のライン設定に取り残されることもあった。ブンデスリーガの強豪でプレーし、高い経験値を持つ板倉でさえ戸惑うほど、冨安は強気にラインをコントロールしていた。

 冨安がDFラインを高く設定できるのは、スピードに自信があるからにほかならない。9月のドイツ戦ではFWレロイ・サネが圧倒的な速さで日本代表の最終ラインを突破したが、冨安がそこに追いついてシュートブロックした。あのスピードがあるからこそ、高いDFラインを設定できるのだ。もちろん、その前段階で潰しに行くという遠藤と守田との信頼関係もある。

 日本代表が世界の第一線に躍り出るためには、ゴール前で勝負をわけるポジションのセンターフォワード(CF)、CB、ゴールキーパー(GK)が、長年課題とされてきた。そこに冨安という世界に通じるCBが育った。

 CFは上田綺世などが成長しつつあるが、まだ世界レベルには遠い。ただ、CFに関しては強豪国でも育てるのに苦労している。それを踏まえて言えば、CFがいなくてもゼロトップなどの戦い方で対応できる可能性もある。

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