サッカー日本代表の1トップ争いに注目の新データ 浅野拓磨のポストプレーが成功、1歩リードか (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【前線でボールを収めた浅野拓磨】

 もうひとつこの試合でおさえておきたいポイントは、1トップで起用された浅野のパフォーマンスだった。スコアに反し、決してカナダを圧倒したわけではない日本が最終的に4ゴールを奪って大勝できた要因のひとつと言っていいだろう。

 大迫勇也が代表から遠ざかって以降、1トップには上田綺世、浅野、古橋亨梧らがポジション争いを展開しているが、ポストプレーもこなす上田以外の2人はスピードを武器とするタイプだ。そのため、くさびの縦パスを収めて起点をつくるシーンが少なく、DFラインの背後を突く攻撃がメインとなっていた。

 当然、この試合で先発した浅野も持ち前のスピードを生かしてDFの背後やギャップを狙うプレーを見せ、相手ゴールを脅かしていた。72分にハーフウェイライン付近から旗手怜央のパスに抜け出し、一気に相手ペナルティーエリアまでドリブルで持ち込んだシーンはその典型だ。また、前半42分の中村のゴールにつながった、単独プレスで相手のミスを誘発したプレーも、浅野ならではのプレーと言える。

 しかしそれ以外に、この試合で効果を発揮していたのがポストプレーだった。

 たとえば、この試合で浅野が敵陣で受けたくさびの縦パスは、前半だけで4本を記録(そのうち1本は失敗)。自陣でレシーブした縦パスも含めると6本あった。後半も開始早々に中山が斜めに入れたくさびのパスを収めるシーンがあるなど、これまで浅野が1トップでプレーした試合では見られなかった数字をマークしている。

 もちろん、カナダの3バック中央を務めた15番(デレク・コーネリアス)の対応の問題も大きく影響したが、浅野が意識的に裏抜けとポストプレーを使い分けていたことで、相手DFの対応を難しくさせていたのは間違いなかった。

 試合後、森保監督は1トップの起用について「9月のヨーロッパ遠征で結果を出した浅野か上田を考えたが、現在の(所属チームでの)出場時間で、より強度を高く攻撃も守備もできて、得点に向けた仕事をしてくれるだろうということで浅野を起用した」とコメント。

 ゴールこそ奪えなかったが、相手のオウンゴールを誘うクロスや中村の得点のお膳立て以外にも、効果的なポストプレーで前線の起点となった浅野は、1トップのポジション争いでまた一歩前進したと見ていいだろう。逆に、次のチュニジア戦で先発が予想される上田がどれだけ前線でボールを収められるかに、改めて注目が集まる。

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