日本代表ベストメンバー招集がもたらす停滞感とリスク「選手ファースト」と言えるのか? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【過密日程のなか日本に呼ぶ意味は?】

 これから行なわれようとする試合のグレードは見えている。カナダ戦、チュニジア戦にどんなメンバーで向かうことが、2026年W杯でベスト8入りを目指そうとしたとき効果的か。4年に1度のサイクルを何度か経験した人は、いま現在、日本代表は何コーナーを回っているか、ペース配分について敏感になる。目の前の試合はどれほど重要か。勝利追求とテストのバランスについて考えようとする。

 視聴率アップを狙うテレビ局が「絶対に負けられない試合だ」と煽っても、年季の入ったファンは簡単に乗ってこない。彼らはテレビ局や番組をスポンサードする企業が、ベストメンバーを好む体質であることを理解している。三笘や久保といった人気選手を呼んでくださいとスポンサー企業が要請しているのではないかと、半分、疑ってかかる人も多いだろう。

 長年、日本代表を応援しているファンは世界情勢にも詳しくなる。チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を戦う選手の数は、今回、招集されたメンバーの中に10人ほどいる。鎌田、堂安を加えれば12人だ。彼らがどれほどの過密日程で選手生活を送っているか、それを理解している人もかなり増えている。

 また、サッカー観戦などで欧州に旅行したことがある人なら、時差がどれほどキツいかも知っている。日本が欧州からどれほど離れているか。「極東」と呼ばれる理由は、地球儀をぐるっと回せば一目瞭然となる。

 欧州で活躍する日本代表選手は、今回26人中22人だ。85%を占める。フィールドプレーヤーの先発が100%、欧州組で占められそうなことが予想できる。だが、選手起用にはバランス感覚が不可欠であると感じるファンは増えている。1999年、フィリピン相手の五輪予選の消化試合に小野伸二を招集して、小野がその試合で重傷を負い、その後長期離脱を余儀なくされた過去を知る人ならなおさらだ。

 選手こそが日本サッカーの宝。「選手ファースト」の見地に立ってメンバーを選ぶべき。森保監督の勝ちにこだわる姿勢、その結果としてのベストメンバーの選択は、日本サッカー界のためというより、自分ファーストに起因する保身に思えて仕方がない。その勝利至上主義は歪んで見える。

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