日本代表でも久保建英に「リーダーとしての顔」トルコ戦で見せた周りを輝かせる異能 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【日本代表でも主力と組めば...】

 ドイツ戦後の久保はそう語っていたが、プレーに確信があるのだろう、なんら迷いがない。個人がチームを牽引し、チームが個人にアドバンテージを与える循環だ。

 現在の久保は、どのサッカーに合うかというより、どのサッカーにも合わせられるだろう。ビジャレアル、ヘタフェでは、受け身のカウンター主体のサッカースタイルに苦しんでいたが、今ならどんな要求に対しても適応できるに違いない。むしろ中心選手として戦術をアレンジし、色合いを出せるはずだ。

 もっとも、やはりボールプレーの中心にある久保が魅力的だろう。彼はプレーを足し算ではなく、掛け算にできる。能力の高い選手と絡むことで何倍も輝かせ、輝く。昨季のラ・レアルでは、ダビド・シルバとの"呼吸"は特別で、久保自身も飛躍的な成長を遂げた。日本代表でも、鎌田大地、三笘薫、遠藤航、冨安健洋など主力と組めば、お互いが掛け算で高め合い、別次元のプレーとなるはずだ。

 トルコ戦に話を戻すと、チームの攻守が噛み合っていないところがあったからこそ、久保の異能が強く滲み出たとも言える。

 右から中に切り込み、裏に入る堂安律に出したパスは合わなかったものの、高速プレーのなかで最高水準のアイデアだった。また、2点目は中村敬斗と入れ替わりながら左足で鋭い球筋のミドルでGKを脅かし、こぼれ球を中村が決めた。自身で決めるつもりだったろうが、得点力も高い中村に花を持たせる格好になった。右CKでは、ショートで伊東純也に出し、そのリターンを受けると、中を警戒したマーカーの裏をかくシーンがあった。一瞬のフェイントで縦に切り込むと、マイナスのクロス。完全に守備ラインを崩していた。

 得点こそなかったが、大勝に貢献した。何気ないディテールに本質はあったと言える。たとえば相手守備網のギャップで、バックラインの谷口彰悟から縦パスを受けると、滑らかなターンで攻撃に転じたシーンは圧巻だった。

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