快勝のドイツ戦をカタールW杯と比較 「変わらなかったデータ」に日本代表の課題が見えた (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【難しい対応を迫られた伊藤洋輝と三笘薫】

 一方、現在の大不振によりチーム戦術でも試行錯誤するドイツは、カタールW杯時とは異なるシステムを採用した。最大のポイントは、ミドルゾーンに前進した時に右SBのヨシュア・キミッヒがボランチの位置に移動し、残った最終ライン3人が右にスライド。陣形を3-2-4-1(3―4-2-1)に変形させることにあった。

 思い出されるのは、カタールW杯時の前半だ。4-2-3-1を採用したドイツは、左SBのダヴィド・ラウムが高い位置をとって3バックにシフトチェンジ。その試合では右SBだったジューレが3人の最終ラインの右に立ち位置を変えたことで、対峙する左ウイングの久保建英が内側に引っ張られたうえ、その背後でトップ下のトーマス・ミュラーが神出鬼没の動きをしたため、その間で右往左往するという現象が起きた。

 その試合の前半におけるボール支配率は、ドイツの72%に対し、日本はわずか18%。日本がほぼ自陣で守備に奔走 した最大の要因はそのミスマッチにあったが、今回の対戦でも似たような攻防が見てとれた。

 キミッヒが内側にポジションを移した時、3-2-4-1の「4-1」は日本の4バックの前で5つのレーンにそれぞれ立った。多くの時間帯での前線5人の並びは、左からセルジュ・ニャブリ、ギュンドアン、カイ・ハヴァーツ、フロリアン・ビルツ、そして右の大外レーンにレロイ・サネ。しかも全体が左寄りに立ち、ドリブル突破を得意とするサネを敢えて孤立させるような攻撃を仕掛けたことで、日本の左サイドの守備に綻びが生まれた。

 たとえば日本が喫したサネの同点ゴールはその典型的なシーンで、以降も30分、33分にもフリーでパスを受けた右大外のサネの仕掛けからゴールチャンスが生まれている。

 日本にとって特に難しい対応を迫られたのが、左SBの伊藤洋輝と三笘だ。

 伊藤(洋)は、自分と冨安健洋の間に立つビルツをマークしながら、外側のサネにパスが渡った場合のケアもしなければならない状況となり、三笘も本来マッチアップしていたキミッヒをケアしながら左背後に立つサネを意識するポジションをとる必要があったからだ。つまり三笘は、カタールW杯の久保と似たような状況に置かれたことになる。

 序盤から攻守にわたって狙いとするサッカーをほぼ実践できていた日本だったが、そこだけが戦術上の数少ない問題点となっていた。

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