久保建英が象徴する日本代表のカタールW杯後の成長 15分でドイツの息の根を止める (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【リーガで磨かれた集中力】 

「時間的には"引いて守り"、というところだったんですが、ドイツのビルドアップに隙があるのは、ベンチからも見てとれていました。なので、なんとか1、2回と思っていたら、とれそう、という瞬間があって。(ドリブルで持ち込み)後ろを確認した時に相手が寄せてきてなかったので(シュートを打つかどうか)悩みましたが、(アシストして)チームの勝利につながってよかったです」

 その攻守の切り替えは、成長の証だろう。獲物の弱点を見極め、容赦なく襲いかかるような獰猛さ。プレーの速さと精度の両立は、まさにラ・レアルで充実させているプレーと言える。彼にとってはルーティーンだ。

 そして92分にも、対峙するディフェンスを奈落の底に突き落とす"一対一の強さ"を見せる。縦に行く、中に切り込む、もしくはクロスを上げると変幻自在。ドイツ戦も右サイドで相手ディフェンスと向き合うと、体重移動だけでコースを作り、左足でクロスをディフェンスの背後に落とす軌道で蹴る。これを田中碧が合わせて決めたが、ピンポイントの正確さだった。

「3-1になっていたので、時間を使おうか、とも迷ったんです。でも、中を見たら(田中が)フリーだったので」

 久保が言うように、本能に近い電撃的プレーだからこそ、相手も読みきれないのだろう。魔法のようなクロスは、今やラ・リーガの猛者たちが総出でかかっても止められないレベルだ。

 それにしても、贅沢な使い方と言える。

 久保は昨シーズン、ラ・レアルをチャンピオンズリーグ出場に導く原動力となっている。今シーズンも開幕から4試合連続ゲームMVPの快挙で、レアル・マドリードでゴール量産体制に入りつつあるジュード・ベリンガムと肩を並べるほどである。控えめに言って、今の欧州リーグで日本人として1、2を争う活躍ぶりだ。

 その彼に与えられたのが、たった15分だけである。

「(やれる)自信はありますよ」

 久保は込み上げる熱さを抑えきれない声音で言っている。交代出場で活躍に満足するような選手ではない。

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