日本代表メンバーのポイントは冨安健洋の起用法 戦い方を語らない森保一監督の姿勢がわかる (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【ドイツの強さを強調した】

 先述のように、勝てば官軍とばかり、ベスト16入りすると、この守備的サッカーへのシフトチェンジを多くの人が肯定した。だが同時に多くの人は、このサッカーに明るい未来がないことを承知しているはずだ。高い位置からプレスをかけるか、ゴール前を固めるか。世界の趨勢を見ればどちらが今日的で多数派であるかが、一目瞭然となるからだ。

 森保監督は続投が決まると、「ボールを握る」「ゲームをコントロールしたい」と、守備的サッカーからの脱却を口にしている。相変わらず不明瞭な言い回しではあるが、以降の6試合の戦いぶりがカタールW杯と一戦を画していたことは事実で、今後はその方向で行くものと楽観的になったものだ。

 そうした経緯があって迎えるこのドイツ戦である。メンバー発表記者会見でひな壇に座る森保監督は、ドイツの強さを強調した。カタールW杯前と同様に。再び守備的サッカーでドイツに対峙するのではないかと、いやな予感が走った。そしてその手の質問が飛び出すと、森保監督は否定も肯定もしなかった。半分笑いを浮かべながら。

ドイツ戦、トルコ戦の日本代表メンバーを発表する森保一監督(右)と山本昌邦ダイレクタードイツ戦、トルコ戦の日本代表メンバーを発表する森保一監督(右)と山本昌邦ダイレクターこの記事に関連する写真を見る 森保監督のどこがいただけないか。不満を覚えるのかと言えば、この受け答えになる。何事も曖昧にして次に進もうとする話術に筆者は激しい抵抗を覚える。おそらく試合後にも説明はないだろう。取材陣は完全に舐められている。そう思わざるを得ない。

 日本代表のサッカーそのものは、W杯後も右肩上がりにあると筆者は見ている。欧州組のプレーを見る限り、後退しているようには見えない。代表監督がもしジョゼップ・グアルディオラなら「私はこうしたサッカーがしたい。なぜならば......」と雄弁に語っているだろう。サッカーの進歩、発展に貢献するような言葉を次々と紡ぎ出しているに違いない。

 森保監督の態度は、百歩譲ってW杯本番直前なら理解できる。布陣の選択肢が2つある時、そのいずれかで戦うことを公言すれば、自軍チームにとってマイナスに作用する。

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