谷口彰悟「センターバックこそゲームメーカーである」パスを出す時は「各停」「急行」を意識 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Sano Miki

 1人ひとりのポジショニングは、1歩もしくは半歩の違いかもしれない。しかし、ピッチ全体に及ぶと1メートル、さらに2メートル......といった大きな違いとなり、相手チームの歪みとなっていく。

 もちろん、中(縦)を通すパスは奪われる可能性もあるため、多少のリスクをともなうが、周りの理解やサポートがあるならば、相手が最も嫌がるところを狙う効果は絶大だ。中が狙えるのであれば中を、そして相手にも中を意識させたあとに外へと出すからこそ、サイドからの攻撃も効果を発揮する。

 日本代表には(三笘)薫や(伊東)純也を筆頭に、すばらしい選手がサイドにもたくさんいるので、彼らを活かすためにも、相手に中を警戒させることは大事だと思っている。

 また、そのために自分が考えているのが、相手を陥れる、欺くパスだったりする。

 90分という時間を考えると、すでに外にパスをしてもいい状況にあっても、あえて中にパスを出すこともある。一度、相手に「嫌なところにパスを通してきたな」と印象づけることで、そのあとの相手の対応を操作することができるからだ。

 中へのパスをフェイクやおとりにして欺き、「そこもあるぞ」と相手に思わせておいて、外を狙う。また、外と思わせておいて、中もしかりだ。

 パスのスピード、パスの質、そしてパスを出す位置──パスのひとつひとつにこだわり、メッセージを届けられるところに、自分の持ち味もあると思っている。

 開始早々の退場で相手が10人になったエルサルバドル戦でコンビを組んだ(板倉)滉とは、試合展開的にもカウンターに注意し、常にふたりでコミュニケーションを取りながらプレーした。

 前半で4点を取ることができたように、大量リードを奪った試合では、ペースが落ちたり、マークがゆるくなったりするおそれがある。しかし、チームの強化を目的とした試合であるため、チームは最後まで攻撃の手を休めなかった。

 そのため、守備では相手の選手たちと同数になることもあったが、うしろにいる選手たちで連係を図り、ゼロで終わろうと会話しながら、それを実行した。

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