谷口彰悟「センターバックこそゲームメーカーである」パスを出す時は「各停」「急行」を意識 (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Sano Miki

 なによりカタールワールドカップで、このパススピードの重要性を痛いほど実感した。ピッチに立つことができたスペイン戦では、彼らの速いパススピードを目の当たりにし、それを完遂できる技術力の高さを体感した。

 相手センターバックであるパウ・トーレスから鋭いくさびのパスがスパッと入り、それを受けた選手がワンタッチで落としてつないだり、ピタっと止めてターンしたりして、スペイン代表は攻撃を繰り出していた。それこそが世界のスタンダードだと肌で感じることができたし、僕自身もそこに基準を定めるようになった。

 パウ・トーレスが好例なように、現代サッカーにおけるセンターバックは守るだけでなく、チーム全体にテンポを出すパススピードの強弱とパスの質が基本的な能力として求められている。

 そのうえで、次に意識したのは、パスをつける位置だった。ピッチの中なのか、それとも外なのか。そして各停なのか、それとも急行なのか。ちなみに、中とはピッチの中央で、外とはサイド、各停は近くにいる選手にパスを出すことで、急行とはひとつ(もしくはふたつと)ポジションを飛ばした選手にパスを出すことを意味している。

 中と外、各停か急行を含め、チームにとって効果的なパスを通すには、相手を見て状況を判断する必要がある。これは川崎フロンターレ時代も含め、常日頃から意識してプレーしているところなので、エルサルバドル戦でも、ペルー戦でも比較的できていたのではないかと感じている。

 たとえば、センターバックが中央に縦パスを入れてこない、つけてこないとわかった対戦相手は、かなり守りやすくなるだろう。警戒すべき方向や注意するべき場所が、かなり限定できるからだ。

 一方で、センターバックが中央に縦パスを入れてくることがわかると、相手は中央を警戒しなければいけなくなり、中を締める必要が出てくる。外だけでなく、中にも意識を向けさせることで、相手のポジショニングは少しずつ変わってくる。

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