谷口彰悟、カタール移籍は人生初の「わがまま」。ベースは今も川崎フロンターレ (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Sano Miki, ©KAWASAKI FRONTALE

 スポーツの世界では、試合に勝ったチームこそが正義というか、正解になる。もちろん、その過程では、チームのスタイルや戦術を積み上げていくことは重要だけど、プロスポーツの世界においては、やはり結果がすべてであることを、日本代表の結果だけでなく、カタールにいて、その後の試合を見ても痛感していた。

 これもたとえばだけど、ずっと守勢に回っていたチームがカウンターからゴールを奪って1-0で勝ったとする。勝利したチームの選手たちや、ファン・サポーターが喜んでいる光景を見ると、これもサッカーの醍醐味のひとつであり、そして正解のひとつでもあることを実感した。それを見て、自分自身もいろいろなサッカーに触れたいという思いが膨らんだ。

 とくに僕は、プロになってからの多くをDFとして過ごしてきた。その時、いろいろなタイプや特徴を持ったFWと対戦してみたいという思いはずっと持っていた。そうした経験をすることで、DFとしての幅がさらに広がると思っていたからだ。

 また、9年間を過ごしたフロンターレは、自分にとって快適すぎる環境ということも理由のひとつにある。自分の要求に対して応えてくれるチームメイトが多いため、自分自身がラクをできてしまっていた。自分は最低限の仕事をすれば、成立してしまうくらい周りが適切な反応をしてくれるチームだった。

 もちろん、そこにやり甲斐や面白さ、楽しさを感じていたことも事実。だけど、そこからさらにワンランク、自分を伸ばしていくために、サッカーに対する考え方が異なり、文化や生活習慣も異なる環境に自分が晒された時、自分自身がどうなるのかを知りたかったということもある。

 試合中の意思疎通やコミュニケーションがより重視されるDFにとって、違う言語のなかで周りを動かすにはどうすればいいのか。そうした苦労や挑戦をしてみたいという思いが強くなっていた。

 あとは、これが海外でのプレーに挑戦した最大の理由かもしれない。心根を明かすと、何もない、"ただの谷口彰悟"として勝負してみたい──という自分のわがままだ。

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