新・森保ジャパンの第一次政権との違い かたち優先から柔軟な考えにシフト、攻め方のバリエーションは増えた (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【縦への速さを軸に攻撃にバリエーション】

 では、日本にとって、このエルサルバドル戦の狙いはどこにあったのか。

 試合前日に森保監督が口にしたのは、攻守における優先順位をピッチで表現すること。守備ではボールロスト後の即時回収、攻撃ではボールを奪ったあとに相手の背後を狙って縦に速くプレーを行ない、それが出来ない場合はサイドに起点を作って崩す、というものだ。

 基本的には、カタールW杯本番を除き、第一次森保ジャパンで目指したものと大きな違いはない。ただし、試合後に「3月と6月の違いは、より縦に速くボールを動かすことを増やすための準備した」と語ったように、相手が1人少なかった状況とはいえ、このエルサルバドル戦では攻撃面で縦への意識が強く感じられるものとなっていた。

 たとえば、前半終了間際の4ゴール目のシーン。相手が前からチェイスしてきたため、板倉がボールをGK大迫敬介に戻すと、大迫は迷わずロングキック。相手が縦に広がっていたことで、大きなスペースができていた中盤で上田がそれを胸で収めて素早く三笘に展開すると、カットインした三笘がシュート。堂安のゴールは、そのシュートを相手GKがファンブルしたところに詰めたものだった。

 あるいは、5ゴール目のシーンでも、相手GKのミスパスをインターセプトした旗手が素早く縦パスを久保に供給。前を向いた久保は、左でフリーになっていた中村敬斗に絶妙なパスを送ると、それを中村がゴールに叩き込んでいる。

 また、縦に行けない場合はサイドに起点をつくるという点では、前半25分の久保のゴールシーンが象徴的だった。このゴールは、右サイド大外の久保から逆サイドの三笘にロングパス。サイドチェンジしたところからチャンスをつくり、最後は三笘のショートパスを右サイドから中央に移動してきた久保がフィニッシュしている。

 後半73分には、途中出場の相馬勇紀が右から入れたクロスを、同じく途中出場の古橋亨梧がゴール前でヘディングシュートを決めて6-0としたが、セットプレーから先制ゴールを決めたことも含め、この日の日本の攻撃は実にバリエーションに富んだものだった。

 数字的にも、シュート数はエルサルバドルの4本(前半2本、後半2本)に対し、日本は計20本を記録。14本だった前半と比べると、後半は6本に大きく減少したが、これは後半頭から76分までに6人が交代したことが影響したと考えられる。

 ちなみに、ボールポゼッションでは、エルサルバドルの45.7%に対し、日本は54.3%。前半開始15分間は日本が46.2%(エルサルバドルは53.8%)、後半開始15分間も42.7%(エルサルバドルは57.3%)と、立ち上がりの時間帯で相手に上回られたが、特にエルサルバドルに押し込まれた場面があったわけではなかった。

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