U-22日本代表の田中聡が明かす「騙したわけではない」ベルギー移籍の真相とサッカー人生初の挫折 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 思えば、田中は小中高の時代ばかりか、湘南のアカデミー(U-18)所属だった17歳にして二種登録でトップチームの試合に出場するなど、Jリーグでさえ挫折らしい挫折を味わったことがない。

 本人曰く、「プロに入ってからもすぐに試合に出られたので、(ケガなどの理由でなく)実力で試合に出られなかったり、ベンチ外になったりっていうのは今回が初めてでした」。

 当然、簡単に納得し、消化できることではなかったはずだ。田中は「初めてベンチ外になった日とかはやっぱり......」と言い淀んだ。

「ここにきて、初めて壁にぶち当たっています。まあ、遅かったくらいなんですけど(苦笑)。やっぱり人生うまくいかないなっていうことを、ベルギーに来て改めて味わっています」

 昨年11月から12月にかけてリーグ戦が中断していた期間は、もちろん「ワールドカップは見ていました」。だが、今はあくまでも現状打破にフォーカスする田中は、「自分も(ワールドカップに)出たいという気持ちはありますけど、まずはそんなに上を見すぎずに、目の前にある課題に今は取り組んでやっていきたい」と静かに語る。

 とはいえ、ワールドカップでの日本代表は、ドイツ、スペインを立て続けに破る健闘を見せたのである。自分自身がどう感じたかとは別に、コルトレイクのチームメイトから、さぞやもてはやされたのではないかと想像したが、「"オレは"まったく言われてないです」。

「でも、(同じコルトレイクに所属する渡辺)剛くんは、チームメイトから『おまえはなんで(日本代表に)選ばれてないんだ?』みたいなこと言われてたんで。

 剛くんは今、コルトレイクで一番目立ってるくらいの選手ですし、ベルギーリーグのなかでも本当にトップ・トップの選手だと思うので、自分もそう言われるくらいに頑張らないといけないなと思いましたね」

 久しぶりのU-22代表での活動は、結果的に負傷による途中離脱となってしまったものの、「正直、コルトレイクよりもレベルが高いし、強度もあるので、ギャップは多少ありますけど、そのなかでも自分がやるべきことを 100% 出せればいい。何かつかんで、またコルトレイクに帰れればいいなって思ってます」と話していた田中。目の前の壁を乗り越えた時、目の前にはまた新たな景色が広がっているはずだ。

 はたして、次はどんな驚きの一報を届けてくれるのだろうか。ステップアップにつながるサプライズなら、いつでも大歓迎である。

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