サッカー日本代表は「かたちだけにとらわれている」 コロンビア戦ではビルドアップができず、何も得られない時間帯も過ごしていた (4ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

【パスコースをつくる動きが続かない】

 逆に、選手が代わったことがマイナスに出たのが、この試合の後半だった。

 日本は、ハーフタイムに鎌田に代わって遠藤航が、町野に代わって上田綺世がピッチに立つと、さらに54分には三笘がベンチに下がって堂安律が右ウイングに、伊東が右から左ウイングにポジションを変えた。プレータイムの管理も関係していたと思われるが、少なくともこれらの交代策によって、前半に何度か見られた明るい兆候を喪失したのは間違いない。

 とりわけビルドアップ時に遠藤や守田が最終ラインに落ちることはほとんどなく、自陣でのボールを保持さえままならなくなったのが問題だった。その結果、前半は53.6%だった日本のボール支配率は、後半開始から60分までの15分間は31.5%に激減。コロンビアの逆転ゴールを含め、その時間帯で日本は6本のシュートを浴びている。

 もちろん、そのゴール直前に足を痛めたバングーナガンデがベンチに下がり、代わった瀬古歩夢がCBで、伊藤が左SBでプレーしたことは、想定外だったかもしれない。しかし、プレーする選手が異なると、ピッチで起こる現象も変化してしまうのは、カタールW杯前の第1次森保ジャパンでもよく目にした光景でもある。

 確かに61分には、ボール保持から左サイドを崩し、最後は守田が供給したクロスを上田が頭で合わせるという惜しいシーンを作ったが、それが後半唯一の好材料。78分に守田に代えて浅野拓磨を前線に投入してからは、練習でも試していない中盤ダイヤモンド型の4-3-1-2にしたことで秩序を失い、今後につながるものが何も得られない時間帯を過ごしたのは、大きな反省点と言えるだろう。

 そもそも、ビルドアップ時の新しい試みは、ボールをつなぎながら敵陣まで前進し、敵陣に入った時に相手の守備陣形が整っている場合は、敵陣内でしっかりとボールを保持しながら崩すという狙いがあったはず。

 にもかかわらず、かたちだけにとらわれて、そのベースとなるパスコースを作る動きが続かないことが、スムースに前進できない最大の要因だと思われる。そのベースさえ失われなければ、選手が違っても、ここまで苦労することはないだろう。

 果たして、6月に予定される2試合で、どのような変化を見せてくれるのか。今回露呈した問題点を念頭に、改めて注目したい。

プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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