トルシエが「森保には心から驚いた」と絶賛するわけ。W杯後に日本で起こったPK論争には疑問を呈す (4ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

(イングランド代表FWの)ハリー・ケインはフランス戦で2度目のPKをしくじった。日本人選手がケインと同じように試合中にPKを外したら、大きな批判を浴びていただろう(イングランドではそこまでの批判はなかったが)。だから、説明は難しい」

 PKは心理的な要素が大きく、選手にかかる精神的なプレッシャーはものすごく高い。

「(PKの成否は)選手がそのプレッシャーに耐えられるかどうかだ。ケインのように突出したクオリティと経験を持つ選手ですら――彼の名前を何度も出すのは、彼のPKがすべてを象徴していると思えるからだが――最も重要な場面でPKをしくじる。おそらく、頭のなかに霧が発生して、脳細胞が正常に働かなくなったのだろう。それ以上のことは言っても意味がない。

 というのも、ケインならば10回蹴れば9回は決められるからだ。日本の選手も同じで、9回決めるだろう。つまり(PKの成否は)、選手のクオリティの問題でも、キックのクオリティの問題でもない。その瞬間の心理的な問題だ。

 その瞬間とは、日本の準々決勝進出が決まる瞬間だ。頭に霧が発生して、脳が間違った情報を脚に伝えた。それだけのことで、それ以上の分析を試みても意味がない。もしも試合翌日の練習で、PKをしくじった選手たちが再び蹴れば、彼らは問題なくゴールを決めるだろう」

(文中敬称略/つづく)

フィリップ・トルシエ
1955年3月21日生まれ。フランス出身。28歳で指導者に転身。フランス下部リーグのクラブなどで監督を務めたあと、アフリカ各国の代表チームで手腕を発揮。1998年フランスW杯では南アフリカ代表の監督を務める。その後、日本代表監督に就任。年代別代表チームも指揮して、U-20代表では1999年ワールドユース準優勝へ、U-23代表では2000年シドニー五輪ベスト8へと導く。その後、2002年日韓W杯では日本にW杯初勝利、初の決勝トーナメント進出という快挙をもたらした。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る