森保にあって、デシャンにはなかったのもの。ゆえにトルシエは、フランス代表への危惧を強めていた (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

 逆に4年後の南アフリカW杯では、内紛が生じて大会中にチームが空中分解した。団結すれば強い。それがフランスであり、その意識とノウハウは、エメ・ジャケの流れを汲むディディエ・デシャンに強く受け継がれているのではなかったのか。

 その点は、トルシエも認めている。

「そうした意識は以前から存在した。1998年もそうだったし、2002年も2006年もそうだった。仲間になるために犠牲を払う、フランス特有のシステムだと言える。いい雰囲気には違いないのだが......。

 ただ、フランスには食事の時、若者はベテランと同じテーブルにつけない。『キミはここには座れないし、私と直接話すこともできない』――そうした側面は、ずっと存在し続けている」

 その結果として、選手はそれぞれにステイタスが与えられてグループ分けされる。

「キミは交代要員だ――試合を終わらせる選手だ、というのもそう。『サブだ』とは決して言わない。そこには、ひとつのステイタスがある

(一般的なチームで言うと)まずは、試合をスタートさせる15人の選手のステイタス――日本でいえば、それは前田(大然)や伊東(純也)であり、長友(佑都)、遠藤(航)......、14~15人のスターティングメンバーに名を連ねる選手たちのステイタスだ。

 次にくるのが、交代要員のステイタスで、日本で言うなら、久保(建英)や堂安(律)、浅野(拓磨)たち......。残り10~20分になった時に、『さあ行け!』と送り出される選手たちだ。

 彼らはよくわかっている。久保は自分がプレーしなくとも、特に問題はない。三笘(薫)も問題はない。ふたりともポジティブで、それが試合を終える選手のステイタスであるからだ。

 そして最後にくるのが、プレーする機会がまずない選手のステイタスだ。日本では、柴崎(岳)や川島(永嗣)、上田(綺世)や伊藤(洋輝)も......。彼らもよくわかっていて、不満を漏らさない。

 監督は、柴崎に『チームに加わり、助けてくれ』と言う。川島にも『リーダーとしてサポートしてくれ』と言う。『グループがうまくいくために、私のサポート役になってくれ』と。

 川島にしても、自分にプレーの機会がないことをわかっている。もちろん、川島にはプレーできる力があるが、実際にピッチに立つことはない。柴崎もそうだ。それが彼らのステイタスだ」

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