サッカー日本代表、これからの注目点を福田正博が挙げる。テーマは「ビッグクラブのレギュラー」と「パリ五輪世代の突き上げ」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

【急な戦術変更に対応できた監督と選手】

 カタールW杯の日本代表の戦いを振り返ると、ドイツ、スペインという強豪2カ国を破ってグループステージを首位で通過。しかも、2戦とも前半、相手に先制点を奪われながらも逆転勝ち。

 ベスト8以上という目標は達成できなかったものの、この内容が評価されたからこそ、次のワールドカップに向けたスタートを森保監督に託すことになったのだろう。

 森保監督は、"選手が主役"を前面に打ち出すチームマネジメントをする監督だけに、その過程においては狙いがどこにあるかをつかみにくいところがある。それはカタールW杯でも多くの人たちが感じたのではないだろうか。

 たとえば、カタールW杯に至るチームづくりの過程で、森保監督が推し進めたのは堅守速攻だった。一般的に堅守速攻型のチームは、先制点を奪えれば勝利に近づくものの、先制点を許してしまうと、相手が前がかりになって攻撃を仕掛けてこないゲーム展開になるため、なかなかゴールを奪い返せないことが多い。

 それにもかかわらず、森保監督の日本代表はドイツ戦、スペイン戦で後半に同点弾、逆転弾を決めた。これが示すのは、森保監督は堅守速攻型だけではない戦い方も日本代表に植えつけてきたということだ。

 4年の歳月をかけて同じことを継続し、そのクオリティーを高めていくのは重要だ。だが、それだけでは足りないと判断した時のために別のオプションも用意する。そこに周到な準備ができるのが、森保監督の強みでもある。

 カタール大会で言えば、3バックもそうした策だった。まるで選手たちの声を受けて3バックをメイン布陣に変えたかのように報道されていたが、森保監督と言えば3バックなのを忘れてはいけない。サンフレッチェ広島の指揮官時代はこの布陣をメインに使ってJ1で3度優勝。3バックの長所と短所を理解していたからこそ、わずかな回数や時間しか試せなかったなかでも、本番であれだけ機能させることができた部分はある。

 もちろん、そうした急な戦術変更に対応できるように、選手がレベルアップしている点も見逃せない。今大会の日本代表メンバー26選手のうち20人は海外クラブの所属。しかも、長友佑都と酒井宏樹は所属クラブで区分すれば国内組ではあるものの、海外組に入れても差し支えないくらい長い海外キャリアがあった。

 逆の見方をすれば、現在のJリーグではワールドカップで世界の強豪国と互角に戦える選手の育成が難しいのだ。これはとても残念なことだが、Jリーグから海外リーグに移籍し、そこで力をさらに伸ばす。これが日本代表の選手には不可欠になっていると、カタールW杯の日本代表は示したと言っていい。

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