クロアチア人記者が明かすPK戦持ち込み作戦。「GKはふだんから特別な練習をしていた」 (2ページ目)

  • ズドラフコ・レイチ●文 text by Zdravko Reic
  • 利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

リバコビッチはPKのマエストロ

 それにしても我らが中盤のトリオは疲れていた。その前のグループリーグの3試合が、すべてがハードで難しく、最後まで結果が見えないものだったからだ。特に最後のベルギー戦は困難な試合だった。なかでもモドリッチの疲労は目に見えて顕著だった。ふだんの彼ならば簡単に勝つだろうデュエルにも、何度も敗れていた。

 そこでクロアチアは後半、攻撃の作戦を変える。高いクロスボールをゴール前に上げ、空中戦から日本のGK権田修平を直接脅かすようにしたのだ。こうして我々は同点に追いついた。デヤン・ロブレンのパーフェクトなクロスからの、イバン・ペリシッチのヘッドでのゴールは、今後何年も語り継がれるような見事なものだった。

 90分のレギュラータイムのなかで、クロアチアは効果的クロスを24本上げ、そのうちのひとつが55分のペリシッチのゴールにつながり、65分にはアンテ・ブディミルがあと少しで2点目を決めるところだった。

 延長戦に入ると、クロアチアは多少アクティブになった。しかし選手やズラトコ・ダリッチ監督からは、このまま時間を潰して、PKに持ち込もうという意図が透けて見えた。なぜならリバコビッチはPKのマエストロだからだ。

 彼はふだんから常にPKに備えて訓練をしている。その練習にはある秘訣があり、キッカーにPKのルールである11メートルでなく10メートルの地点からボールを蹴らせるのだという。それだとより反射能力がつき、本番で素早く反応ができるからだ。そして実際、彼は3本のPKを止め、クロアチアに勝利をもたらした。

 私は日本対クロアチアの試合をこれまで生で2回見ている。1998年のフランス大会と2006年のドイツ大会だ。その時も日本の選手は我々をいらだたせたが、今回は本当に最後の最後まで苦しめられた。

 日本は最初3-4-2-1でプレーしていたが、その後、守備の形を変えて4-5-1的になった。クロアチアのクリエイティブなプレーをしようという狙いは、日本の固いディフェンスラインにあたってかき消されてしまった。縦パスも通せず、コンパクトなプレーもできない。

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