サッカーマニア平畠啓史さんが注目しているカタールW杯の面白ポイント。「エムバペは早くオチがほしい今の時代が求めた選手」 (3ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

日本らしい戦術や戦い方が生まれてほしい

 スペインは、ドイツの縦に対して横のイメージが強いですね。ピッチの幅を広く使ってきます。4-3-3でサイドに展開してから崩しが始まるイメージ。日本は焦れずに我慢するのが大事ですね。

 たとえスペインのボールポゼッションが70%になっても焦らない。点を取られていなければ大丈夫という気の持ちようじゃないと。中途半端にボールに行くと、(マークが)ズレて、ズレて、ズレて、ゴール前に運ばれる形になりかねない。誰になんと言われてもボールを持たれても気にしない!

 1試合目と2試合目の結果次第で戦い方が変わる試合ですが、無理にボールを取りに行かなくてもいいと思っています。ボールを持たれても、持たせているぐらいの気持ちでいいんです。取りに行けばいくほど間を通されてしまうので。

 日本人って、頑張って走ってる姿を見るの好きじゃないですか。僕も日本人なんでそうなんですけど、でもこの試合ではボールを取りいかないでそこに立っていることが大事、勝つために動かないでここに立っているんだよと。そういうサッカーがあること、そういうサッカーも面白いんですよっていうのも、日本の人に知ってもらえる機会です。ワールドカップしかサッカーを見ない人もいるので。

 サッカーにたずさわる人として、試合前からこういうことを言っていったほうがいいのかなと思っています。ボールを持たれていると「なんだ日本ダメじゃん」って言われちゃうと思うんですが。

 こんなこと言っているんですが、ワールドカップって自分たちの現在地を知る大会でもあるので、持っている力を示してどのぐらいやれるのかというのを見てみたい自分もいます。自分たちの力を出してそれでやられちゃってもしょうがない、それを受け入れる気持ちも僕のなかにはあります。

 今回の日本は、海外でプレーしている選手が本当に多いので楽しみですよね。僕の世代と今の若者の世代の海外への意識って全然違うと思うんですよ。僕らは今でも外国人としゃべるとしても緊張したり、こっちがどんな表情を作ればいいのかなとかわからない時がありますもん。

 でも今の選手たちって、外国人と戦うのは当たり前って感覚じゃないですか。ユーチューバーも日本を超えて世界に発信していってる人もたくさんいます。サッカーだけじゃなくて、日本社会の外国への意識が変わってきてる。特に今の若い人たちは。冨安健洋選手なんてプレミアリーグで普通にやれているじゃないですか。

 僕がワールドカップで期待しているのは、日本らしい戦術や戦い方が生まれてほしいなと。フォーメーションや戦術はいろいろ出尽くした感じはあるんですが、それでも日本独特な戦い方やシステムってあるんじゃないか。それはゆくゆくなのかもしれませんが、しっかりした形のものじゃなくても雰囲気だけでも出てくればなと思っています。

平畠啓史 
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組の出演中。平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。

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