元日本代表監督ファルカン独占インタビュー。在任時「一番の決断は前園真聖の起用だった」 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

2回見ただけで代表に入れた選手も

 私が新たに代表に招集した選手については、さまざまな批判も受けた。曰く、まだ準備ができていない、まだそのレベルにない、メンタルがついてきていない......しかし、私の考えは真逆だった。代表に入れなければいつまでたっても準備はできない。

 たった2回、プレーを見ただけで代表に入れた選手がいる。岩本だ。岩本は私が最も信頼する選手のひとりだった。彼は大きなサプライズであり、彼が結果を出してくれた時には本当に誇らしく感じたものだ。それから小倉。それまでオランダにいたので見たことはなかったが、実際にそのプレーを見てすぐに代表に入れようと思った。彼は明確なプレーのビジョンを持っていて、常にゴールを狙っていた。ああ、彼も本当にいい選手だった。
 
 新しい選手を代表に招集する際には、私は常に4人のスタッフと話し合い、決定していた。その後のトレーニングで重要視したのはフィジカルの強化だ。そう、日本で仕事をするにあったっての最大の課題はこのフィジカルだった。多くの選手は世界で戦うに必要な強靭さを持っておらず、対戦相手と競り合った時、日本の選手はよく倒れていた。

 フィジカルトレーナーのティムは毎日忙しく働いていたが、いつもこう嘆いていた。

「ボニタウ(ファルカンのニックネーム)、この選手たちはテクニックもスピードもインテリジェンスも持っている。なのにフィジカルだけが足りない。あまりにももったいなすぎる。とにかくまずは体を鍛えなきゃだめだ。こんな筋肉じゃピッチには送り込めない」

 ただ、成長する可能性は大いに秘めていた。分析したところ30%のフィジカルの向上が見込めるとの結果が出た。最初のテストで代表の選手たちはよく走り、反射神経も優れていることがわかった。これにフィジカルが加われば、もっと容易に動くことができる。

 私は彼らに踏ん張って戦ってほしかった。踏ん張り競り勝てば勇気も自信もわいてくる。その他の資質はすべて持っているのだ。あとひとつフィジカルだけが出来上がれば、日本は格段に強くなる。それが私の第一の目標となった。

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