「客観的に見ても実力的にそうだった」前田遼一がW杯に行くためには何が足りなかったのか

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by MEXSPORT/AFLO

日本代表「私のベストゲーム」(7)
前田遼一編(後編)

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 前田遼一は初めて定着した日本代表でアジアカップ優勝を手にし、いくらかの充実感を覚える一方、現実を思い知らされることも少なくなかった。

「前からの守備であったり、そういうところでは貢献できていたからこそ、あそこまで使ってもらえたんだな、っていう思いはありましたけど......」

 そう前置きして、前田は続ける。

「特に(決勝の)オーストラリア戦は、僕と相手センターバックとの個人の戦いだったという印象が残っています。もうちょっと能力が高ければゴールを決められるのに、って思うシーンが数多くあって、自分の実力のなさをより強く感じさせられた試合でした」

 もちろん、得点できるか否かはFWだけの問題ではない。そんなことは頭ではわかっていても、「あと一歩、ここで入っていけないから点がとれないんだって、そんなことを自分自身感じながらプレーしていたのをよく覚えています」。

 オーストラリアはその後も厚い壁となって、前田の前に立ちはだかった。

「(ワールドカップ・ブラジル大会の)最終予選のアウェーで対戦した時も、それをすごく感じました。クロスは上がってきているのに、中にいる自分がそれに合わせられない。そこで決められる選手になりたいと強く思わされました。アジアカップの決勝もそうだったんですが、オーストラリアの選手には、結局は個で負けて、(個で)守られているのを感じさせられていた気がします」

 アルベルト・ザッケローニ監督が就任して以降、日本代表の1トップを任され続けた前田は、「中東のチームとかとやると、自分で点をとって勝つこともできたし、少しは成長できているっていう感覚はありました」。

 だがその一方で、「でも、レベルが高い相手になると、結局はゴールを決められない。だから......、そうですね......、(日本代表に定着するようになっても)どんどんステップアップできている、とは思えなかったです」。

 当時のアジア最終予選を振り返っても、前田が得点した相手はオマーン、ヨルダン、イラクだけ。つまりは中東勢相手なら得点できても、オーストラリアからはとれない。非情な現実は数字にも表れていた。

「まさしく、そういうことです。実際、予選には出られても、ワールドカップ(本大会)には行けなかったんで。それは自分が感じていた『ここでとれないとダメだ』っていう、その差を埋められなかったからだと思っていました。それは自分のなかにすごくありましたし、その思いは今もあります」

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