攻撃面ではデメリット現象増加。森保ジャパン、付け焼刃の4-3-3は続くのか (4ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 前半に日本が記録したクロスは計10本あったが、右からのクロスは4本中2本が伊東のクロスで、左は6本中3本が長友。後半も右は伊東が4本中4本を記録したが、左の長友は1本に減少して南野が7本中3本を記録。これは、後半になってオーストラリアの右サイド攻撃が活性化したため、長友の攻め上がりが陰を潜めたからだった。

 もっとも、中央から攻めてこないことがわかっているオーストラリアにとって、日本のクロスはそれほどの脅威にはならなかった。身長で上回っているうえ、ロングボールや縦に速い攻撃からクロスを供給されても、ボックス内に進入してくる日本の選手の人数が少ないからだ。当然、日本のクロスの成功率は高くなく、21本記録したこの試合のクロスで成功したのは、先制点も含めて3本しかなかった。

 確かに開始早々の先制点のシーンでは、相手守備陣の混乱や体力的な影響もあり、南野のクロスに対して田中がボックス内に顔を出すことができた。しかし、この試合で中盤3人に任されたタスクの多さを考えれば、時間の経過とともにその回数が減るのは当然だ。その現象を含めても、クロスだけに頼る攻撃では限界が見えていると言える。

 敵陣で5本以上のパス交換ができたのもわずか1度しかなかった日本は、結局、ボール支配率においてもオーストラリアの53.4%を下回る46.6%だった。できるだけボールを保持してプレーすることを標ぼうしてきた森保ジャパンにとっては、これも気がかりだ。

 この試合で採用した4-3-3は、くさびの縦パスや連動した攻撃の激減、中央攻撃を活かすためのサイド攻撃の威力低下など、従来とは異なる現象をいくつも生み出した。

 もちろん守備面のメリットを一定程度示すことができたが、おそらく奇跡的と言ってもいい決勝ゴールが生まれなかったら、新布陣の4-3-3はお蔵入りしていた可能性が高い。少なくとも、攻撃面のデメリットを考えれば、付け焼刃の布陣でアジア最終予選の残り6試合を勝ち続けられるかどうかは、かなり微妙なところだろう。

 注目は、11月のベトナム戦とオマーン戦で、森保監督が今回採用した4-3-3を継続するかどうかだ。いずれにせよ、W杯出場権獲得のためにも、今回のオーストラリア戦で得たプランDのメリットとデメリットを今後の戦いに活かす必要がある。

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